
米電気自動車(EV)大手テスラが待望のロボタクシー(自動運転タクシー)サービスをついに開始した。しかしこれは、同社株の極めて高いバリュエーションの正当化に役立っているわけではない。むしろ、はるかに進んだ自動運転車事業を展開する米アルファベット傘下ウェイモがいかに過小評価されているかを浮き彫りにしている。
テスラが先週末にテキサス州オースティンで開始したロボタクシーサービスは、午前6時から深夜0時まで市内の限られた地域で一部の成人に対して提供される。使用する20台ほどの車両はテスラのスポーツタイプ多目的車(SUV)「モデルY」で、同社の高度運転支援システム「フルセルフドライビング(FSD)」の最新バージョンを搭載する。テスラが昨年発表した専用車両「サイバーキャブ」の生産開始は早くても2026年になるとみられている。
つまり、今回の立ち上げは規模が小さく、収益も期待できない。テスラは初期の利用者に対して1回当たり4.20ドル(約610円)しか請求しておらず、「安全監視員」として助手席に乗るテスラ社員がテキサス州の最低賃金である時給7.25ドルで働くとすると、そのコストさえほとんど賄えないことになる。
それでもロボタクシーは、1兆1000億ドルに上るテスラの時価総額を支える野心的な事業の一つに位置付けられている。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータによると、テスラは時価総額で同社に続く世界の上位自動車メーカー20社の合計を上回る。テスラの株価は年初来19%下落しているものの、向こう4四半期の予想利益に基づく株価収益率(PER)は依然として約150倍と高水準にある。ファクトセットによると、テスラのPERはアルファベットの18.5倍を、また、自動車メーカーのフォード・モーター、ゼネラル・モーターズ(GM)、トヨタ、メルセデス・ベンツグループ、ホンダの平均7.6倍を大きく上回っている。