
「写真を撮るならスマホで充分、今さらデジカメは使わない」という人が増えているが、そんな人にこそ刺さりそうなデジカメ「X half」が登場した。その昔、「ハーフカメラ」「ハーフサイズカメラ」と呼ばれるフィルムカメラがあったことをご存じだろうか。名前の通り、35mmフィルム(36mm×24mm)を半分のサイズ(18mm×24mm)で撮影できるカメラで、24枚撮り、36枚撮りなどで売られていたフィルムを本来の2倍の枚数撮れること、撮れる写真が縦長である面白さなどがうけて一時期人気があった。X halfは、そのハーフカメラを、現代の技術でよみがえらせた最新デジカメである。今回は、X halfを持ってスペインへ行き、写真を1400枚撮影してきた。使って分かったX halfの魅力を、旅の写真とともに紹介したい。(テクノロジーライター 大谷和利)
25年ぶりのサン・セバスティアン
筆者の周囲でも、何かと話題の富士フイルムの新基軸デジタルカメラ「X half」。発売(6月26日発売)前からメディアの注目も高く、デモ機も出払い気味だったのだが、今回、運良くお借りでき、スペインのサン・セバスティアンなどを旅しながら1400枚超の写真を撮影してきた。スマートフォンのカメラ機能に押され気味だった、カジュアルなデジタルカメラ復権の可能性を秘めている、X halfとの旅の記録をお届けしよう。
サン・セバスティアンは、フランス国境に近いスペイン北部、バスク地方の風光明媚な美食の街で、約25年前にも1度訪れたことがある。地元では、バスク語の地名であるドノスティアと呼ばれることも多い。今回の旅の目的の1つとして、過去に撮影した写真の場所を特定したい気持ちがあったので、X halfの話に移る前に、そのエピソードにも触れておこう。

以前のサン・セバスティアンへの旅に持っていったカメラも、たまたま富士フイルムの製品で、斬新な縦型デザインが特徴の「FinePix 700」だった。街を歩いていると、とある高級ホテルの前が騒がしい。どうやら宿泊中の有名サッカー選手が最上階の窓から顔を出したらしく、若い女性ファンたちが集まって歓声を上げているのが見えた。
こういうときには、望遠のないカメラではるか上方にいるサッカー選手を撮るより、ファンの反応にスポットを当てたほうが面白い…というわけでとっさに撮影した1枚が、以下の左側の写真である。
しかし、25年も前のことゆえ、格式あるホテルの前ということは覚えていても、それが正確にどこだったかがわからない。そこで、思い当たるところを歩き回って見つけたのが、1912年に建てられたホテル・マリア・クリスティーナで、その前の広場に当時の面影が残っていた。

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