就労継続支援事業所が、手作業で作り上げる自家焙煎コーヒーが人気

手作業で良質なコーヒー豆だけを選別し、豊かな風味、クリーンさや甘味を実現。豆の個性を生かした4種類がそろい、好みの味を選べるのもいい。福岡市の就労継続支援B型事業所「にじいろキャリア弥永(やなが)」が製造・販売するコーヒー「にじきゃり珈琲」が注目を集めている。運営するのはエフユーだ。(取材・文/大沢玲子)

就労継続支援事業所が、手作業で作り上げる自家焙煎コーヒーが人気代表取締役・古江健人氏

 就労継続支援B型事業所とは、障がいや体力、年齢などによって一般就労が困難な人に働く場を提供し、社会復帰までを支援する福祉サービスだ。

 同社代表取締役の古江健人氏は、「自分自身が職業選択に失敗し、転職活動も思うようにいかず、ふさぎ込んでしまった経験が就労継続支援事業を立ち上げる契機となりました」と明かす。

 友人や家族ともまともに会話ができなくなってしまったつらい経験を経て、「精神疾患で一般就労が難しい」「相談相手がいない」「人間関係が苦手」といった悩みを抱える人をサポートしたいと一念発起。独学で関連法の勉強や障がいに対する理解を進め、他の事業所の見学やセミナー参加などを経て、2022年8月に事業所を開設。

利用者の特性を生かし
製造工程を役割分担

 B型事業所では自分のペースに合った働き方で基礎的な就労スキルを習得でき、仕事(作業)の対価として工賃が事業者から支払われる。同じ就労支援でも、雇用契約の下で働ける人を対象とするA型事業所では最低賃金が担保されるのに対し、B型事業所は単価が低い軽作業の受託が多い。工賃向上が社会課題となる中、にじいろキャリア弥永が独自事業としてスタートしたのが自家焙煎コーヒーの製造・販売だ。理由として古江氏は大きく三つ挙げる。

 一つ目が、コーヒー製造は豆の選別、焙煎、粉砕、計量、包装など工程が多く、作業分担がしやすいことだ。「ハンドピッキングで欠品豆を取り除く細かい作業など、利用者全員が個々の特性を生かし、製造に携われるのが特徴です」(古江氏)。利用者のやりがいを醸成しつつ、おいしくて飲みやすいコーヒーを実現している。