U-NEXT見放題の新プランを発表する楽天グループの三木谷浩史会長兼社長写真:つのだよしお/アフロ

楽天モバイルが2025年1~12月に約1万6000局の基地局を建設する計画を関係事業者に提示したことが、ダイヤモンド編集部の入手した内部資料で分かった。つながりにくさを解消して契約獲得と解約防止の狙いがある。だが、設備投資を大幅削減した“過去”があるために工事業者の協力が得られず、計画は難航している。楽天では10月から動画配信「U-NEXT」見放題の新料金プランを開始する予定だが、大容量の動画コンテンツをスムーズに配信できるのかという問題が浮上しつつある。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

「機密」の内部文書を独自入手
驚愕の基地局設置計画をメディア初公開

 楽天モバイルは6月23日、動画配信大手U-NEXTのコンテンツを見放題にする新たな料金プランを10月から開始すると発表した。

 楽天モバイルの料金体系は、3ギガバイト(GB)まで月額1078円、20GBまで同2178円、それを超えると同3278円になる3段階に設定されているが、これに、同4378円でU-NEXTを見放題にするデータ容量無制限プランを追加した。

 楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は「U-NEXTに加入される方は大量にデータを使用する。データを気にせずに動画を視聴してもらえるようにした」と述べた上で「これにより、間違いなくARPU(1契約当たり月間平均収入)は高くなる」と狙いを明かす。

 楽天モバイルが目指す「EBITDA黒字化」には、契約数とARPUの増加が必要だ。契約数は3月末時点で778万回線(前年同期は663万回線)となったが、ARPUについては1~3月期に2078円(同1966円)と停滞しており、黒字化に必要とする2500~3000円の水準から程遠い。

 楽天はARPU引き上げの切り札として動画コンテンツ見放題の導入に踏み出した。だが、その一方で、モバイル事業の赤字削減のために設備投資を大幅に減らしてきた楽天が、大容量の動画データの配信に耐えられる通信品質を確保できるのかという問題が再び注目されつつある。

 その鍵を握るのが、通信ネットワークに配置する基地局の増設だ。ダイヤモンド編集部は、「Confidential(機密)」と記された楽天モバイルの基地局建設計画の内部文書を入手した。

 それによると、通信規格の「4G」と「5G」に加え、プラチナバンドと呼ばれる700メガヘルツ(MHz)周波数帯といった項目ごとに詳細な内訳で、25年1~12月に約1万6000局の基地局を設置するという強気の計画が記されている。

 次ページで、その計画をメディア初公開する。同時に、複数の関係者の証言を通じて、その計画が難航している実態も明らかにする。