楽天 延命#1写真提供:楽天グループ

楽天グループの巨額赤字を生み出してきた携帯電話事業「楽天モバイル」の回線数が急速な伸びを見せている。そのけん引役とされるのが、契約者に最大1万4000ポイント分の楽天ポイントを付与する“三木谷キャンペーン”だ。社内では「一致団結プロジェクト」という呼称でグループ全社員が総出で契約獲得に攻勢を掛けている。特集『楽天 延命』の#1では、ダイヤモンド編集部が入手した内部資料と関係者の証言を基にその手口を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

楽天社員にノルマ「1人12回線」の重圧!
“一致団結プロジェクト”の裏側を大公開

「自分の歴史をたどって過去にお世話になった人たちを書き出していくのが有効です。楽天モバイルを申し込むと言ってくれた人、提案中の人、コンタクトをした人など、ステータスに応じてきめ細かなフォローを怠らないように」――。

 9月9日、東京都世田谷区にある楽天グループ本社ビル4階大ホール。恒例の全体朝礼「朝会(あさかい)」では、グループ従業員が一丸となって楽天モバイルの契約販売に取り組む「一致団結プロジェクト」の報告がなされていた。プロジェクトで成績上位になった社員が営業ノウハウを共有する場となっているのだ。

 家族や親戚、友人をはじめ、あらゆる人間関係をターゲットに営業攻勢を掛けるのが楽天流だ。なりふり構わない営業手法で実績を上げた社員は、三木谷浩史会長兼社長から直々に表彰される。

 このプロジェクトは、対外的には「楽天従業員紹介キャンペーン」と呼ばれている。

 楽天社員の紹介で携帯電話の回線を契約すれば、他社からの乗り換え(MNP)で1万4000ポイント、新規契約で7000ポイントの楽天ポイントを付与する一方で、契約を獲得した社員には1契約当たり1万ポイントのインセンティブが与えられる仕組みだ。

 最大の特徴は、楽天社員が個人のX(旧ツイッター)、YouTube、インスタグラム、ティックトックなどのSNSアカウントを開設し、携帯電話の契約の申し込みを“自主的に”受け付けていることだ。三木谷氏も社員に交じって「招待リンク」を開設し、そこからの申し込みに同様のポイントを付与していることから「三木谷キャンペーン」とも呼ばれている。

 ほとんどの楽天社員にとって、携帯電話の営業は「業務の範疇外」である。それでも自らSNSにアカウントを開設して契約獲得にいそしむのは、会社から事実上のノルマが課されているためだ。関係者によると、楽天社員は「12月末までに1人12回線」の契約獲得が求められていることが分かった。

 楽天モバイルによると、9月12日時点の携帯電話契約数(災害など緊急時の「BCP」対応契約を除き、自社「MNO」および格安スマホ「MNVE」を含む)は742万回線。2024年に入って契約者は急速な勢いで増加している。

 果たしてこのキャンペーンは、楽天モバイルの契約急増に、どれだけの役割を果たしたのか。

 ダイヤモンド編集部は、楽天モバイル内部から一致団結プロジェクトの実績データを入手した。次ページで、楽天モバイルの契約急増をけん引したとされる三木谷キャンペーン、つまり一致団結プロジェクトの全容を明らかにする。