古い伝統が今も残るブータンは、仮想通貨の先駆者としては意外な存在だ古い伝統が今も残るブータンは、仮想通貨の先駆者としては意外な存在だ Saumya Khandelwal for WSJ

【ティンプー(ブータン)】ヒマラヤの小国ブータンは、壮大な景観や「国民総幸福量(GNH)」の指標で知られるが、最近は積極的な暗号資産(仮想通貨)政策で注目を浴びている。

 ブータンは現在、13億ドル(約1880億円)相当のビットコインを保有しており、これは同国の国内総生産(GDP)の約40%に相当する。仮想通貨プラットフォーム「アーカム(Arkham)」によると、政府が保有する仮想通貨としては世界第3の規模だ。

 同じく巨額の仮想通貨を保有している米国や英国などとは異なり、ブータンはこれを犯罪行為から押収したわけでも公開市場で購入したわけでもない。辺境の仏教国ブータンは2020年、豊富な水力発電を利用して人知れずビットコインのマイニング(採掘)を開始した。

「ブータンにとって多くの点で自然なことだった」。このプロジェクトを担当したブータンの政府系ファンド、ドゥルック・ホールディング・アンド・インベストメンツのウジワル・ディープ・ダハル最高経営責任者(CEO)はこう話す。「われわれはビットコインをいわば価値の貯蔵手段として見ている。金(キン)のようなものだ」

 多くの国が仮想通貨を金融システムに組み込む方法を模索している。ドナルド・トランプ米大統領は3月に署名した大統領令で、 ビットコインなどのデジタル通貨による国家備蓄 の創設を指示した。

 仮想通貨アナリストによると、大国は仮想通貨の覇権を狙っている。ニューヨークやロンドンが伝統的な金融を牛耳っているようなものだ。一方、仮想通貨に成長を賭ける小国もある。エルサルバドルは2021年、 ビットコインを法定通貨として採用 するという大胆な試みに出たものの、普及は進んでいない。