ディオバンは世界で6000億円以上、日本でも1000億円以上を売り上げた大型新薬として有名
Photo by Takeshi Yamamoto

 火の収まる気配がない――。ある大手製薬会社の幹部は嘆く。

 スイスの大手製薬会社、ノバルティス ファーマの降圧剤「ディオバン」の論文問題のことだ。

 2001~04年に行われた京都府立医科大学、東京慈恵医科大学、滋賀医科大学、千葉大学、名古屋大学の5大学でのディオバンに関わる医師主導の臨床研究について、ノバルティスの元社員が当時、同社社員の身分を開示せず、非常勤講師として勤務する大阪市立大学の肩書で論文作成に関与していたことが発覚した。

 大阪市立大学とノバルティスの“名刺”を使い分けたという行為が「第三者の目から見て疑惑を生む」と問題視されたほか、元社員がデータ解析を担当していたために「データの改ざんがあったのではないか」と疑われたのだ。

 ノバルティスは5月22日、第三者による報告書をまとめた。現時点では、肝心のデータの改ざんについては判明しなかったが、元社員の関与は「不適切だった」とした。24日には、医学系118学会が加盟する日本医学会が元社員の関与した5大学に対し、調査委員会によるデータの再検証を求めた。

 焦点は、実際にデータの操作や改ざんの痕跡が見つかるか否かだが、ある製薬業界に詳しい医師は「過去に行われた他の有名な臨床研究にも疑惑が“飛び火〞する可能性がある」と指摘する。

 複数の業界関係者によると「日本の臨床研究では、過去、疑惑が指摘されたものがある」という。今回の問題をきっかけに、再度、多方面からの検証が行われる可能性が高く、結果次第では日本の臨床研究の信頼性が地に落ちることになる。

眠れぬ研究者も多い?

 そもそも医師主導の臨床研究といえども、実際は製薬会社からの提案によるものが少なくない。製薬会社は医師に対し、研究費の提供はもとより、あらゆる形で協力を行ってきた。過度な両者の“依存関係”は薄らいでいるが、かつては製薬会社の社員が医師の臨床研究に患者として参加したり、論文や資料作成に関わることは、日常的に行われていた。眠れぬ夜を過ごす関係者は多いだろう。