うなぎ屋で飲むお酒

 うなぎ前に何を飲むか。うな重に何を合わせるか。愛飲家にとっては大事な問題です。うなぎがご飯に合うのは、うな重を見ても明らか。ならば米から作る日本酒が合わないはずがありません。江戸時代は燗酒やどぶろくが定番でしたが、理屈から言うと次の2つの選択肢があります。

(1)サラっとした辛口 うなぎの脂とたれをすっきりさせるタイプ
(2)どっしりとした濃いめ うなぎに負けないタイプ

『日本酒名門会』では、2006年から「鰻に合う酒」と銘打ち、うなぎや日本酒に造詣の深い方々を招いて、うなぎと日本酒の相性を審査しています。

 うなぎとの相性を考えて造られた酒もあります。石鎚酒造(愛媛県西条市し)のその名も『石鎚純米酒 土用酒』。愛飲家といえるほど強くない私ですが、試してみたところうなぎの味わいを包み込み、引き立たたせる酒でした。

 うなぎに合う酒といったら焼酎も外せません。まず、米焼酎。日本酒では削ってしまう米の外側も残っているのでたんぱく質や脂質も残っていて、米の甘みと香りはうなぎとの相乗効果をもたらします。蒸留工程を経ているため、米のうま味を残しながらも、すっきりした口当たりは蒲焼以外のうなぎ料理にもおすすめです。

 麦焼酎は、麦の香りと香ばしく焼かれた蒲焼きと相性抜群です。キレもあるため、うなぎの脂を程よく洗い流してくれる効果もあります。

 養殖うなぎの生産量日本一の鹿児島県は、芋焼酎の本場で100を超える蔵元があります。「うなぎ」と銘打った焼酎がいくつもあり、実に個性豊か。白焼、蒲焼、肝焼と相性研究すれば、何通りものベストマッチが見つかるはずです。

 フランスのワインの名産地ボルドー地方、ロワール地方にはそれぞれ川があり、うなぎの郷土料理がワインとともに親しまれてきました。そもそもワインとうなぎは相性が良いのです。ワインセラーを備えるうなぎ屋も増えました。

 うなぎは一人でも楽しめる最高の料理です。そこにお酒があれば、相乗効果が期待できるだけでなく、酌み交わすことで人と人のつながりもでき、さらにおいしくなります。