野田岩、竹葉亭...老舗うなぎ屋がなが~く営業できるカラクリとは?“ウナギ1本勝負”でも負けない納得のワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

うな丼640円の新興チェーンから、「野田岩」や「竹葉亭」など歴史上の人物が通った100年以上続く老舗、はたまた星付きレストランの数万円のコース料理まで、うなぎ有名店のビジネスモデルを大解剖した。(グルメジャーナリスト 東龍)

300店突破「鰻の成瀬」を解剖
ビジネスモデルがすごかった...!

 2025年の土用の丑の日は、7月19日と31日だ。夏の風物詩とも言える鰻だが、昨今その楽しみ方には大きな変化が見られる。老舗の高級店から、新興の専門チェーン、さらには牛丼チェーンの手頃なうな丼まで選択肢が広がる中、ビジネスモデルはどうなっているのか。それぞれ解剖していこう。

 今、最も勢いのある鰻店が、「鰻の成瀬」だ。22年に横浜で開業して以来、全国で300店舗以上を展開中。外食業界全体が苦戦する中で、異例の成長スピードを見せている。

 人気の秘密は、まず、メニューの価格設定にあるだろう。うな重「並」(脂少なめあっさり風味)は梅1600円、竹2200円、松2600円、「上」(ふっくら柔らかジューシー)は梅1900円、竹2500円、松2900円、「特上」(国産鰻の上品な味わい)は梅3400円、竹4000円、松4400円の9段階から選ぶことができる。実に、高級感とコストパフォーマンスのバランスが絶妙だ。それなりに単価が高いにもかかわらず、「この値段でこの味なら満足」と感じさせる。

 そして驚異の出店攻勢を可能にするのは、徹底した合理化と標準化にある。「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」と評されるように、鰻の調理には本来、職人の技術が欠かせない。しかし鰻の成瀬では、鰻が蒲焼きに加工された状態で各店に運ばれ、独自開発した調理器によってボタンひとつで「蒸し」と「焼き」が行われる。提供までの時間は早ければ5分、遅くとも15分というから驚きだ。火入れやタレも統一されているため、調理経験がないスタッフでも一定の品質を保てる。これにより人材を確保でき教育コストも抑えられる。