
うなぎ料理に欠かせない山椒や、うなぎをコース料理で頼むと付いてくる肝吸い、漬物、水菓子。いわばうなぎの脇役であるこれらの食べ物は、なぜうなぎと相性がいいのでしょうか?
※本稿は、高城 久『読めばもっとおいしくなる うなぎ大全』※本稿は、高城 久『読めばもっとおいしくなる うなぎ大全』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。
日本最古のスパイス、山椒
うなぎ料理に欠かせない山椒は、日本最古のスパイスです。山椒は、日本原産のミカン科の落葉低木。うなぎと山椒の関係を示す最古の文献は、室町時代までさかのぼり、蒲焼の原型である、焼いてぶつ切りにしたうなぎにも山椒味噌をつけていました。
山椒の辛味成分、サンショオールは、内臓の働きを活発にし、消化不良を改善する働きがあります。山椒を含む柑橘系けいの植物が持つ香り成分、シトロネラールは、鎮静・鎮痙作用、抗不安作用を持っています。山椒が持つ特有のさわやかな香り成分、ジテルペンは免疫細胞を刺激して活性化する働きがあります。
日本で栽培される山椒の品種の代表的なものは3つあります。
(1)朝倉山椒(兵庫県産) 木にトゲがなく実は大粒
(2)高たか原はら山椒(岐阜県産) 実が小ぶりでさわやかな柑橘系の香りが特徴
(3)ぶどう山椒(和歌山県産) ぶどうの房のように粒の実が連なるのが特徴
お馴染みの粉山椒は、山椒の熟した実の皮を乾燥させて粉状にしたものですが、皮以外の実、若芽、葉、花もそれぞれ香辛料として使われます。枝もすりこぎになります。うなぎは実山椒しょうとも大変相性がよく、うなぎの山椒煮も各地で作られています。
もとを正せば、うなぎ特有の臭いを消すために使われていた山椒。今は、養殖技術や調理技術の進化によって臭いのあるうなぎは稀(まれ)になりました。ですから、いきなり蒲焼に大量の山椒をかけるのは避けて、山椒ありなしそれぞれの味を楽しむのもよいかと思います。私が提案するうな重をおいしくする山椒のかけ方をご紹介しましょう。
(1)蒲焼をめくってご飯の上(またはめっくったうなぎの皮)にお好みの量をかける
(2)蒲焼を元に戻して、ひと呼吸。ほんの少し待ってから食べる
こうしてみると、うなぎの味わいの後から山椒の香りがほどよく追いかけてきます。ご飯にもほのかな山椒の香りがして、これまたうまい! どうぞ、お試しください。