関東風と関西風、「どっちがおいしい論争」がしばしば勃発する「うなぎの蒲焼」。関東風は背開きにして頭を落とし、関西風は頭を落とさずに腹開き。そして最大の違いが「蒸し」を入れるかどうかだ。そんな、みんな大好きな蒲焼の美味しい店を見極める、1つのポイントを通が伝授する。本稿は、高城 久『読めばもっとおいしくなる うなぎ大全』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。
うなぎの蒲焼は
関東と関西でこんなに違う
お馴染みの料理でも歴史や風土が異なる関東と関西で大きな違いがあります。うなぎの蒲焼もそのひとつです。関東風は、背開きにして頭を落とし半分に切り竹串を打ち、素焼きにしたうなぎを蒸してから焼き上げます。関西風は、頭を落とさずに腹開きにしたうなぎに鉄串を打ち、蒸さずに焼き上げます。
関東と関西では捌き方から違います。武士が多かった江戸(関東)では腹開きは切腹を連想させるので背開きになったといわれています。一方、商人文化が根付いていた関西では信頼関係を築くための「腹を割って話す」から腹開きになったといわれています。もっともらしく聞こえますが、『守貞漫稿』には「江戸は腹開き」とあります。よく考えてみれば、関東でも他の魚はワタを取るので腹を開きますし、何が真実かは、藪の中。
そして、関東風と関西風の大きな違いは蒸しを入れるかどうかです。関東では蒸してやわらかくなったうなぎが串から落ちにくい竹串が用いられています。また、関西では焼きにかける時間を少しでも短縮するために熱伝導率の高い鉄串を使用します。
串の打ち方が違えば焼き方も異なります。関東は余分な脂を落とし、うま味を閉じ込める素焼きの工程が重要。火加減を見極めながら何遍も返しつつ焼くので「万遍返し」ともいわれています。関西は焼きだけでふっくら仕上げるため、正に火との格闘です。吉塚うなぎ屋(福岡県福岡市博多区)では、焼きながらもみ、たたく「こなし」という技を編み出し、その技を修めたうなぎ居酒屋 西口商店(宮崎県宮崎市)などでも用いられています。
肝心の味わいの違いですが、関東風は蒸すことで余分な脂が落ち、やわらかくふっくらと仕上がります。関東風の本場・東京では、それに合わせて甘みを抑えたたれを使います。