肝吸い、漬物、水菓子

 うなぎ屋でうな重を注文するとうな重のほかにお椀や漬物がセットでつく場合が多いですね。さらには小鉢やデザートがつくこともあります。価格高騰などの影響で肝吸いが別注の店もありますが、いずれにせよ、何か汁物がないと、落ち着きませんし、うな重だけではちょっと寂しい感じもします。

 肝吸いの「肝」とは何か。一般的には肝というと肝臓を指しますが、うなぎの場合、肝は胃や腸を中心とした内臓すべてを指します。

 うなぎの肝をおいしく食べるには下処理が肝心です。血合いを水でよく洗い流し、苦玉(にがだま)と呼ばれる部分を取り除きます。苦玉は非常に苦い部分で、中には胆汁(たんじゅう)が入っています。さらにうなぎの血や苦玉には、イクチオヘモトキシンというたんぱく質性の毒素が含まれているので、よく水洗いして下茹でします。

 こうして下処理をした肝を椀種(わんだね)にした吸物が肝吸いです。肝吸いも多様で、茹で肝か焼き肝か、つまは何か、吸口(すいくち)は何か、など肝吸いにこそ店の特徴が現れます。また、名古屋以西は肝吸いか赤だしが選べる店が多い印象です。東京は私の知る限り、選べる店は数店程度です。

 うなぎ屋の漬物といえば、まず思い浮かぶのは奈良漬です。理由は諸説あるようですが、土用の丑の日つながりという説が有力です。土用の丑の日にはもともと「う」のつく食べ物で食い養生をする習慣がありました。そこに目をつけて、土用の丑の日にうなぎを推したのが平賀源内でしたが、奈良漬は瓜ですから、うなぎ同様、「う」のつく食べ物。土用の丑の日に一緒に奈良漬も、となっても不思議はありません。栄養素的にも、抗酸化物質がうなぎのビタミンの吸収を助けるため理想的。

 一方、同じ「う」でも、すいか(うり)や梅干しは、うなぎとの食べ合わせはNGという話もよく聞きますが、これは医学的にも問題がなく、もっぱら迷信のようです。うなぎに関わる迷信はほかにもいろいろあり、それだけでも長年日本人に愛されてきた食べ物であることがわかります。

 うなぎのコース料理を頼むと締めくくりに水菓子しとして果物が出されます。特にビタミンCを多く含む果物は、うなぎに含まれる鉄分やコラーゲンの吸収をアップさせてくれます。うなぎ屋のセット料理やコース料理も、実はよくできているのです。