2024年6月に大規模なサイバー攻撃に見舞われ、11月に下請法違反で公正取引委員会から勧告を受けるなど、立て続けに試練に直面したKADOKAWA。6月26日に開催された株主総会では、夏野剛社長が冒頭でこれらの問題について株主や関係者に対し深く謝罪した。この試練を乗り越えようとするKADOKAWAは、エンタメ業界でどのように成長を目指すのか。業績の変化や株主総会での質疑応答、専門家の分析などから多角的に考察する。(朝日希新、ダイヤモンド・ザイ編集部)

年間の出版IP創出数は6000点以上!
ゲームでも世界的ヒットIPが誕生

 KADOKAWAは大規模なサイバー攻撃を受けた影響で、2025年3月期に24億円の特別損失を計上した。しかし、2026年3月期は「ようやく業績でいい評価ができそう」と見るプロは多い。KADOKAWAの成長の原動力は、なんといっても豊富な出版IPだ。2025年3月期の出版IP創出数は6430点にものぼる。IPとは知的財産のことで、キャラクターのほか、マンガやアニメなどエンタメコンテンツそのものを指す。KADOKAWAはこれまで、出版を軸に「涼宮ハルヒ」「ソードアート・オンライン」「Re:ゼロから始める異世界生活」など数々のヒットIPを生み出してきた。中期経営計画では2028年3月期に年7000点の創出を目指すとしており、今後もメディアミックスの基盤となるようなヒットIPの登場が期待される。

 出版だけでなく、ゲームセグメントでもヒットIPの創出力が評価されつつある。子会社のフロム・ソフトウェアとバンダイナムコホールディングスが共同開発した、アクションRPG『エルデンリング』が世界で大ヒットしているのだ。発売から約3年で、世界累計出荷本数はなんと3000万本を突破。2025年3月期は本編と、本編に追加したコンテンツの売上が好調で、ゲームセグメント全体の業績を力強く牽引し、大幅な増収増益となった。SBI証券の栗原智也さんは、「2025年5月には、派生タイトル『エルデンリング ナイトレイン』が発売され、初動数日で世界累計出荷本数は350万本を突破。いいスタートを切っています。出版に限らず、ゲームでもロングセラーとなりそうなIPを創出できています」と話す。