資産3億円の億り人・JAMMYさんは「株を買うときは社長で判断する!」が信条で中小型株に投資する個人投資家。株主総会やIR説明会に積極的に参加し、社長の人となりに触れて「買い」「売り」を判断する投資手法は、『ダイヤモンド・ザイ2025年5月号』でも紹介したとおり。今回はそこで載せきれなかったJAMMYさんのエピソードを紹介。実際に、株主総会やIR説明会での社長の「回答」が売買の決め手になった例をお届けしよう。(山出暁子、ダイヤモンド・ザイ編集部)

きっかけはニトリIR説明会
似鳥社長の明快な回答に感銘を受ける

「社長の歯切れが悪い返事」が危ないワケPhoto by ponta1414 - stock.adobe.com/jp

 JAMMYさんが、社長の話を聞いて実際に「買い」を判断した最初の銘柄は、2009年のニトリ。きっかけは、当時社長(現会長)だった似鳥昭雄氏の講演だった。

「ある講演会で似鳥社長の話を聞く機会がありました。そのとき、『この人は未来からやってきたんじゃないか』と思うほど、その後起こるであろう世の中の変化と、ニトリの事業戦略について緻密に語っていました。何よりも、講演参加者からの質問に、会社に関する数字はもちろん、あらゆる内容によどみなく答えていて圧倒されました。この人が経営する企業なら成長するに違いないと確信して、業績などの数字を確認した後、ニトリ株を買ったんです」

 実際に株を購入したのは、講演を聞いた直後の2009年4月末。その後、買い増しや一部売却によって保有株数の増減はあったものの、2016年2月まで6年10カ月にわたって保有を続けた。この期間中、株価は約3倍に上昇したという。

「2016年2月期の中間決算で営業利益率の低下が見られ、“さすがにこれ以上の高成長は難しいのではないか…”と感じ、そこから徐々に売却をはじめました。最終的に2016年2月に全て売りましたが、初めて似鳥社長の話を聞いたときの衝撃や、話す熱量は今でも忘れられません。その後、似鳥社長が語ったように世の中は変化していったし、ニトリの事業も成長して、株価も右肩上がりでした。私が売った後も上昇を続けたので、そこはちょっと早まった、と思っていますが、社長を見込んで株を買って成功した初めてのパターンです」

株主総会に参加し
「売り」判断から一転「長期保有」に

 社長と直接対話したことで、売ろうか迷っていた株を「むしろ長期で応援しよう」と思い直したケースがある 。ネット通販サイトで買い物客が商品を探しやすくするための「サイト内検索」や、「口コミ」のシステムなどを開発しているZETA(6031)だ。

 2024年12月初旬ごろから、山崎徳之社長がX上で自社の株価について「もっと評価されるべき」など煽るような投稿を連発し始めた。個人投資家の間でも「社長がこんなことを投稿すべきではない」と評判が悪く、JAMMYさん自身も違和感を覚え、不信感を持つようになった。株価も下落基調で含み損も拡大していたことから、売却すべきか迷っていたという。

 だが、2025年1月、個人投資家向けIR説明会に参加し、山崎社長の話を直接聞く機会を得た。

「このとき、真摯に事業について語る社長に感銘を受けました。直接話を聞いて感じたのは、Xでの投稿は、社長が自社のプロダクトが好きすぎるあまりに『この良さを知って欲しい!』という熱い思いが空回りして、過剰なポストにつながっていたんだな、ということでした」

 さらに2025年3月の株主総会では、1時間以上にわたる質疑応答の時間が設けられ、山崎社長は株主の質問に対し、丁寧に答え続けた。その姿勢からも、SNSでは伝わりきらなかった社長の本気度と誠実さが伝わってきた、とJAMMYさん。こうして社長の“生の声”に触れ、改めて「長期で保有していこう」と決めたのだという。

 株価はその後も下落を続け、2025年4月にはトランプ関税ショックの影響もあり大きく下落。だが、長期保有を決めたJAMMYさんはその局面で買い増しを実行した。その後、株価は上昇に転じて、現在は含み益が出ているという。

「やはり、表面的な情報だけで判断せず、社長に自分の疑問を直接ぶつけてみて確認することが大事だと実感したケースです。そのためにも、私は株主総会やIR説明会に参加するのは投資家として必須だと考えているんです」