『ばけばけ』第37回より 写真提供:NHK
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第37回(2025年11月18日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
「おトキ、お金もちだが」
言葉がわからないいら立ち。トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)の気持ちはいたいほどわかる。言葉がわからないってほんとうにもどかしいものだ。そう思うと、言葉の発明はすごいことだ。
サワ(円井わん)とぶらぶら歩きながらおしゃべり。サワは洋妾じゃなくて良かったじゃないかと言う。洋妾になるよりもクビになったほうがマシという考え方だ。
トキはクビになったら収入がなくなることを心配している。なにしろ月20円だから。
洋妾でなく「ただの女中で」20円という事実に直面したサワは固まって見える。
「おトキ、お金もちだが」
「ちっともちっとも」
トキは借金がやまほどあると言うが。
金の切れ目が縁の切れ目という言葉がある。この瞬間、ふたりの友情のゆくすえが心配になった。
収入レベルがあまりに違うとおつきあいしにくくなることはあるものだ。それゆえ、極端に収入があるように見えないように気を配る人もいるようだ。ほんとうならお金のあるなしに関係なくつきあっていけるのが理想である。たぶんトキとサワはそうだとは思う。
高石あかりと円井わんは、ビアーとサワーの語感が微妙に似ているような似ていないようなやりとりから、収入格差に対するデリケートな心の揺れをユーモラスに演じている。
いや、いまはお金と友情について考えている場合ではない。トキが女中をクビになるかもしれない瀬戸際だ。
このままクビになったらどうしようと家でも悩むトキ。
松野家はのんきで。その根拠は内職も牛乳配達もしているから。そんなだから何年たっても暮らしぶりが上向かないのではないか。銀二郎(寛一郎)があれほど働いていたのはなんだったのだろう。







