
造船最大手の今治造船の檜垣幸人社長は7月23日の記者会見で、子会社化するジャパンマリンユナイテッドが日米交渉に絡んで、政府から特殊船分野の技術協力を打診されたことを明らかにした。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)
関税巡る日米交渉の“台風の目”となった
造船業の日米協力はいかに!?
「世界シェアが落ち込んでいる日本の造船業には米国に投資するお金はない。ただ、個々の企業で特殊船の分野で技術供与するとは聞き及んでいます」。
国内造船最大手の今治造船の檜垣幸人社長が7月23日に東京都内で記者会見し、日米関税交渉で注目される造船協力の進捗を明らかにした。
個々の企業とは、今治造船が今後株式を60%取得して子会社化する国内造船2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU)のことだ。財閥系、総合機械系の流れをくみ、砕氷船や艦艇の建造技術を擁している。
この日は米国の関税措置を巡って日本に対する相互関税を15%とすると日米両政府が合意したことが明らかになった。
米国のトランプ大統領が自国の造船業復興を掲げて同盟国である日韓に協力を要請して以来、造船業は突如として関税交渉の“台風の目”となっていた。想定されている砕氷船など高付加価値船の技術を持つJMUがどんな役割を担うのか注目されていた。
今治造船は非上場企業だが例年、東京都港区の日本造船工業会で前年度の業績を発表している。この日は2024年度の売上高が前年比4%増の4646億円で、増収増益だったと発表した。
例年の会見に参加する取材陣は20人程度だが、今年は関税交渉を巡って注目される業界の最大手ということもあって約30人の記者が詰めかけた。NHKは今治造船のお膝元である今治の支局から記者が会見場を訪れていた。
部品が巨大で、屋外のドックで組み立てる造船業は、ロボットの導入など建造プロセスの自動化が難しいとされてきた。次ページでは、造船における日米協力の実態に迫るとともに、ベールに包まれた今治造船の自動化の進捗もお伝えする。