原書は110ページほど、日本語版もわずか145ページの薄い本が、世界で1300万部というビジネス書の歴史に残るベストセラーになりました。1時間もあれば読めてしまうシンプルな寓話に込められた、普遍的な真実とは?

刊行から30年で97刷のベスト&ロングセラー

 ――いまアメリカの産業界で、わずか110ページほどの小冊子が飛ぶように売れ、そして、奪い合うように読まれている。
 より高い生産性と、組織成員のより高い充実感をもたらす画期的なこの新『バイブル』の登場により、アメリカの経済界には新たな衝撃と自信が生まれている――(1ページ)

K・ブランチャード、S・ジョンソン著、小林薫訳『1分間マネジャー 何を示し、どう褒め、どう叱るか!』
1983年2月刊行。装丁は川畑博昭氏。ハンディなビジネス書はほとんどソフトカバーだった当時、角背のハードカバーはおしゃれな印象を与えました。

『1分間マネジャー』は訳者による『ニューヨークタイムズ』書評欄の引用から始まります。1981年にアメリカで出版されたThe One Minute Managerは、大ベストセラーとなり、翌年にはスペイン語版、ポルトガル語版が刊行、そして1983年2月に日本語版が刊行されます。以来30年後の現在まで増刷を重ね、最新刷は2013年4月の97刷というロングセラーです。

 また、翻訳はドイツ語、フランス語をはじめとした主要なヨーロッパ言語ばかりでなく、ブルガリア語、アイスランド語、アラビア語、ヘブライ語、トルコ語、タイ語など25ヵ国語を超え、世界のマネジャーの必読書となっていると言えるでしょう。

 時と場所を超えて読まれる理由は何か。理論や専門用語がまったく登場しない読みやすさと、シンプルな「3つの秘訣」を寓話というスタイルで提示した普遍性に、その秘密があるようです。

 物語は、一人の青年が有能なマネジャーを探す旅のなかで「1分間マネジャー」に出会い、「3つの秘訣」を伝授されて自身も1分間マネジャーへと成長し、かつての自分と同じように訪ねてきた若い女性にマネジメントの秘訣を伝えようとする、という場面で終わります。

 では、「1分間マネジャー」とはどんなマネジャーなのでしょう?