気になることが
ありすぎる

 登美子は結婚式の引き出物は嵩がデザインした三星の包装紙で包みましょうとはしゃぐが、なにかへんな表情で「まさかまだ?」と登美子。嵩は次郎に気兼ねしているのだと気遣うのぶ。

 嵩は「次郎さんの写真ずっとしまったままだから」と気づいていて。気兼ねしないで堂々と写真を飾ってほしいと言う。いや、でも、一緒に暮らすんだよね……と思うのだが。

 第87回で、登美子が泊まった翌日、次郎の写真を飾った茶箱から、その写真がなくなっていたことに嵩は気づいていた。写真を片付けたのはのぶだった。登美子が写真を見て嵩と比較していたのがきっかけだろう。

 登美子がお化粧している机の茶箱に飾ってあったらしき花が移動していたので、彼女が片付けたようにも思えるのだがミスリードであろう。ここで登美子が勝手に片付けていたら意地悪すぎる。

 87回で茶箱がアップになっていたが、レビューでうっかりした印象を書かなくて良かった。このようにドラマはその回では描かれず、別の回で詳細に触れられることもあるので、評価のタイミングを読むこともレビューには大事。ときには外して先走ってしまうこともあるが。

 嵩は登美子に「今日だけでもふたりきりにしてほしい」と帰るように頼む。

 登美子が素直に去ったあと「僕から言わなくちゃいけないことがある。のぶちゃん、いつもまっすぐ、ひたむきに走るのぶちゃんのこと。子どもの頃からずっと愛しています。千尋の分も、次郎さんの分も、僕が幸せにします。結婚してください」

 こんなふうに言われて、のぶは涙目で「ふつつかものですけんどよろしくお願いします」と応える。嵩も滂沱(ぼうだ)の涙を流していた。

 嵩が男を上げていく。それは良いことだ。が、その一方でのぶのドラマが少なめな気がする。例えば、のぶが茶箱に布を敷き写真と花と折り鶴を飾って、きれいにしていたのを片付けて、古い茶箱がポツンと置かれた状態にするまでの葛藤も見たかった。

 あの写真は茶箱の中にしまわれているのだろうか。遺言の手帳や形見のカメラなども一緒に? そこのところが気になってならないが、それもまた別の日に描かれるのだろうか。

 正式にプロポーズされていないのに、次郎の写真を片付け、嵩と一緒に暮らそうと考えているのぶのためらいももう少し詳細に描いてもいいのではないかと余計なお世話だが思ったりもするのだ。だって主人公はのぶなのだから。

 いや、のぶのこと、嵩が全部わかっている。それだけでいいということなのかもしれない。

 それから、戦死した千尋ものぶが好きだったと聞いた登美子はどう思ったのだろう。そういえばお父さんの帽子は? 嵩が子どものとき描いてくれたお父さんとのぶの絵はいまどこに? いろいろ気になることがありすぎるが、こっちが見逃している可能性もあって迂闊なことは言えないのである。

「やなせたかし×三越包装紙」の実話、“たっすいがー”嵩が見せた仕事人の顔【あんぱん第88回】

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