「やなせたかし×三越包装紙」の実話、“たっすいがー”嵩が見せた仕事人の顔【あんぱん第88回】『あんぱん』第88回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第88回(2025年7月30日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

ついに嵩が
正式プロポーズ

「ふつつかものですけんどよろしくお願いします」(のぶ)

 おめでたい。ついに正式に嵩(北村匠海)がのぶ(今田美桜)にプロポーズした。

 優柔不断でたっすいがーな嵩だがそれなりに人生を考えていた。

 第88回を最初から順を追って見ていこう。

 嵩が大手・三星百貨店に就職が決まったと聞いて、のぶは心から喜べない。

 漫画を描くために高知新報社を辞めて東京に来たのではなかったか。

 漫画が描きたいのはやまやまながら、嵩はのぶと結婚するためには定収入を得なくてはいけないと考えていた。安易に恋人や妻のヒモ的な地位に安住しようとしない姿勢は立派である。でも、のぶはこれでいいのか気になってしまう。

 なんで嵩は漫画一筋にならないのかと怒り出さないのぶは少し成長したのかもしれない。あるいは嵩への好意を意識してしおらしくなったか。次郎(中島歩)に対してものぶは妙にしおらしかった。

「どんなに忙しくても漫画は描くから。まずはお給料を貯めて一緒に暮らせるところに引っ越そう」

 のぶにそう誓う嵩。そのあと何か続けて言おうとしたとき、浮浪児たちに邪魔される。いいところになると誰かが現れるコントみたいなことが先日からずっと続いている。浮浪児たちが正式な玄関ドアから顔を出さずに小さな窓から覗き込むところには演出の工夫を感じる。