大規模修繕目前に「売り逃げ」する投資家がいるというが、投資家でなくても大規模修繕の前に一時金(例:数百万円)の支払いを要求されるなら引っ越す人はいるだろう。そんな理不尽な大金を払いたい人なんていない。拙著でベストセラーになった『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)では、10年後に住み替える理由の1つに大規模修繕を挙げているくらいだ。

買い手が購入を避けて
価格が下落したマンション

 そうしたことで廃墟化したマンションは無いわけではない。スキー場や温泉地に建てられたリゾートマンションが思い浮かぶが、この廃墟化の根拠は人が住んでいないことに端を発し、管理費の滞納と修繕積立金不足が生じているため、次の買い手が購入を避けて、価格が下落していることにある。

 今の都市型のタワマンにそんな入居者がいない物件はないし、価格も上がっているので、どうやって廃墟化するのか意味不明で、そもそも論理が破綻している。価格が下がる物件ほど廃墟化が起こる確率が高いとすれば、タワーよりも低層の方が廃墟化リスクが高いことになる。

 その他の廃墟化の根拠に、建て替え費用の高騰を挙げる人もいるが、そもそもほとんどのマンションで建て替えはできない。建て替えができたのは、容積率緩和を受けて、解体費用と新たな建築費を増えた床の売却でまかなえた場合だけで、事例数もかなり限定的である。そもそもできない建て替えを理由にする意味など無い。

 ファンドバブル崩壊の影響という理由も出て来るが、そもそもファンドが建てたのなら、所有しているのはファンドであり、その価格が下落しても居住者には関係ない。その空室率の上昇といわれても入居者は知ったことではない。災害リスクも出て来るが、タワーで無くても立地によって災害による被害を受けるもので、タワー固有のものでもない。

「タワマンが廃墟になる」と主張するのは、神戸市長の久元氏が急先鋒になる。その主張の目的は、「晴海フラッグ」のような街にしないことらしい。NHKの調査によると、晴海フラッグでは2690戸のうち、3割以上の943戸に住民票の登録がなされていないそうだ。このような事態に空室税をかけることで、居住される住戸を増やそうというものらしい。