
コロナ禍の緊急事態宣言以降
度々要請される「資金繰り支援」
コロナ禍以降、中小企業の借入金の返済リスケ(条件の見直し、変更)の申し込み件数は317万件あまりに及ぶ。「返済に困っているので、返済をリスケさせてほしい」と金融機関に申し出ている件数である。そして、この実行確率は99%となり、ほぼ全件リスケに応じているということだ。(「貸付条件の変更等の状況について」として金融庁のホームページ公開されている)これはコロナの緊急事態宣言発令直前の2020年3月10日から24年9月末までの実績となり、増え続けている。
この様な事態になっていながら、24年の全国企業の倒産件数は、1万6件(東京商工リサーチ調べ)または9901件(帝国データバンク調べ)と推計されている。ローン返済のリスケが倒産予備軍だとしても、その倒産割合は0.3%と低くなっている。
ちなみに、24年7月末までの実質無利子無担保融資(民間+政府系)、いわゆる「ゼロゼロのコロナ融資」の実績は約264万件となる。この内、完済は約2割でまだ債務は返済半ばである企業は多い。
この様なことが起こるのには歴史がある。資金繰り支援は銀行が自発的にやっているのではなく、要請されているのだ。直近では、24年11月28日に石破政権の主要閣僚の名前で要請が金融機関等に出されている。「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策を踏まえた事業者支援の徹底等について」、というタイトルで、借入金や住宅ローンなどの資金繰り支援を要請している。こうした要請は、コロナ禍の緊急事態宣言以降、何度となく行われている。コロナが終了した現在、特殊な経済状況ではない中で、こうした要請がされるのは、現政権下で倒産件数が増えることを延命したい意思が感じられる。
こうした資金繰り支援を行うのには負の歴史がある。まず、1998年に自殺者が8472人増加して3万2863人となった。この要因は、金融ビッグバンを控えた銀行の貸しはがしの横行だと言われている。銀行側からすると、バブル崩壊以降、不動産価格が下がる中、不良債権化した不動産関連融資残高に応じて貸倒引当金を積む必要があり、それを避けるために貸しはがしを行ったケースが多い。その結果、自殺者の多くが50代以降の男性経営者となり、社会問題化した。