マンションの資産性は値上がりが期待できるからこそ、投資対象になり、居住者が少なくなる傾向にある。まず、神戸市のマンションの資産性は全国的に見ても高くないので、投資対象にされることがほぼ無い。登記簿での所有者調査も住民票での居住者調査もすぐにでもできることで、その実態調査を待ってから税制などの検討をすればいいはずだ。
その調査結果は、対策を打たなければならないような話にはならないと筆者は推測する。逆に、戸建ての廃墟化を調べたら、相続後に空き家となっているものが非常に多いことも分かるだろう。
バイアスをかけずに調査したら、タワマンよりも戸建ての廃墟化リスクの方が圧倒的に高いことは国土交通省の調査などで明らかだし、そうしたリスクのある戸建てを更地にして大量に供給される状況にすれば、現在上昇している戸建用地は下落に向かわせることができるので、早急に実行に移してもらいたいものである。
中央区が実施して成功した
「容積緩和」とは?
タワーマンションが建ちやすい政策を取り、成功した事例を挙げておこう。
東京都中央区の人口はジリ貧傾向で1997年には7万2090人に減っていた。そこで、中央区は1993年から容積緩和を実施する。容積緩和とは都市計画上の容積率を上げることだ。単純にこれまでより高い建物が建てられるようになったのだ。これにより、同じ土地面積に対して、建物面積が容積緩和した分だけ増える。
例えば、建物面積が25%増えれば、賃貸であれば25%賃料収入は伸びる。今や家賃収入に応じて不動産の価値が決まる時代である。家賃が25%増えれば、売買価格も25%上がる。この容積緩和によってデベロッパー(不動産開発業者)はこぞって収益を生みやすい中央区で開発競争が始まる。
マンションがたくさん建つとオフィスへの職住近接を望むニーズを吸収して人口は増え始めた。こうして、2019年には人口は16万人に増えた。1997年の2倍以上だ。タワーマンションは時代の申し子であり、街の起爆剤になっていることは確かだ。タワーマンションへの課題認識を間違うと、住民の不利益になるので、その際には進退を検討願いたいものだ。
(スタイルアクト代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)