
新居でふたりきり……と思ったら
「30秒だけ時間をあげます」
さあ、新居。ドラマ開始4カ月にしてようやく夫婦の物語がはじまる。これは朝ドラにしては遅いほうだ。独身ものでない限り、たいていこの頃はすでに結婚して子どもができて、母子の問題がテーマになってくる。
ふたりは荷物をほどく。「屋根があるだけありがたいき」「居心地の良さそうな家や」とのぶは前向き。部屋が落ち着いたときには外で雨が降り出していた。
ふたりきりになると間がもたない。なにかもじもじ。嵩が共同トイレに行っている間に、のぶは次郎(中島歩)の写真を飾る。飾っていいと嵩から言われて納得ずくながら、なんだか微妙な気持ちになりそう。
トイレから帰ってきた嵩はずぶ濡れになっていた。天井に穴が開いていたのだ。これは嵩のモデルであるやなせたかしの実話。史実では長屋ではなく焼け残りのアパートの2階。
「屋根があるだけありがたいき」と言っていたのぶは「晴れちゅう日には青空が見えて気持ちよさそうやね」と呑気に笑う。嵩としては、どんなときでも前向きに笑ってくれる君が好き、という感じであろう。
ずぶ濡れやとタオルで嵩の頭を拭くのぶ。接近した嵩にちょっとドキリ。そこへ、どんどんと玄関を叩く音が。
雨の中、訪ねてきたのは世良(木原勝利)だった。薪鉄子(戸田恵子)からの結婚祝い?の布団を届けに来たのだ。用事はそれだけではない。新年早々、鉄子が地方回りに行くので事務所の留守番を頼むと言う。
「30秒だけ時間をあげます」とおもむろにカウントしはじめる世良。2回続いた「30秒だけ時間をあげます」ですっかりキャラが定着した感がある。お笑いに「天丼」という手法がある。同じことを2回以上繰り返すことで笑いを呼ぶことだ。1回では忘れられてしまうが2度3度繰り返せば、印象に残る。
例えば、「あるよ」の一言で一躍人気者になった『HERO』(フジテレビ)の田中要次のように、連続ドラマでは、ほんの少しの出番を何度も繰り返すことで注目されることがある。こういうキャラクターが出てくるとドラマは活気づく。
三星百貨店宣伝部の出川部長(元純烈の小田井涼平)が「柳井くんはやっぱり仕事が早いねえ 独り言」と大きな声で言うのも彼のキャラ立ちに一役買っていた。