女性共通の悩みを笑いにするのは、男性を攻撃し、性別対立を煽っている?

 こうした騒ぎがあったにも関わらず、今年に入ってからも次々と新たな女性スタンダップコメディアンが大好評を博している。2018年にはわずか2人だったのが、その翌年には6人(楊笠さんも含む)に、その翌年は13人、コロナ後には17人、21人、そして今年は42人ものスタンダップコメディエンヌたちがデビューした。

 そんな彼女たちは女性たち共通の日常の苦しみや悩みをネタにして笑いをとることに、ますます一部の男性たちには「男を攻撃することで注目を浴びようとしている」と苛立ちを隠さない。

 そこに7月20日、浙江省政府宣伝部が「スタンダップコメディが性別対立の泥沼に向かうのを警戒すべし」と題した政府文書を発表した。内容は「政治的立ち位置」を中心に公の場での言論を諌める形をとり、タイトルでは「性別対立」としているものの、明らかに男性あるいは伝統的男性優位社会を嘲笑する女性コメディアンたちを、「性別対立を煽っている」と批判する内容になっていた。

 だが、これに対して「彼女たちが語っているのは性別対立じゃない。生理問題だ」という声も、一部男性ファンから出ている。彼女たちは自分たちの経験や体験を声にした。それを性別対立とよび、また政治的立ち位置を求めるのは一体何のためなのか? 人間の生理に政治的立ち位置が必要なのか?

 こうした動きは、コメディエンヌたちの活躍を押し留めるきっかけにつながるのか。それとも、これを新たな人生のプレッシャーとして、彼女たちはさらなる新ネタを切り開いていくのか。興味を持って見守っていきたい。

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