「S.O.S」(シスターズ・オブ・スー)。左が大Sこと徐熙媛(バービィー・スー)さん Photo:AFP/JIJI「S.O.S」(シスターズ・オブ・スー)。左が大Sこと徐熙媛(バービィー・スー)さん、右が妹の徐熙娣(ディー・スー)さん Photo:AFP/JIJI

台湾のトップスター、女優の大Sことバービィー・スーさんが日本旅行中に病気で死亡した。48歳という若さでの突然の死に、台湾を含む中華圏では「なぜ助からなかったのか?」という疑問が噴出。特に在日中国人の間では「日本の医療は本当に先進国レベルなのか?」といった声も上がり、日本の医療システムへの批判や誤解が広がっている。しかし、日本で暮らす外国人の多くは日本の医療を高く評価しており、むしろ問題は「旅行者が医療にアクセスしづらい」「日本の病院は旅行者の医療データを知る手段がない」点にあるのではないだろうか。(フリーランスライター ふるまいよしこ)

旧正月のめでたい気分を吹き飛ばした、台湾スターの訃報

 2月3日、中華圏メディアで流れた「大Sが滞在先の日本で急死」という報道は、激震をもたらした。

 大S――台湾人タレントの徐熙媛(バービー・スー)さんは、台湾、中国、香港のみならず東南アジア全域の華人圏で知らぬ人はいないくらいのビッグスターだった。10代のときに妹の徐熙娣(ディー・スー)さんと「S.O.S」(シスターズ・オブ・スー)というコンビを組んでデビュー、バービーさんは「大S」、ディーさんは「小S」と呼ばれていた(なお、徐家にはもう一人芸能界入りしていない長姉がおり、バービーさんは次女、ディーさんは三女である)。

 特に大Sは、2001年に日本の漫画作品『花より男子』を改編したテレビドラマ『流星花園』で主人公・牧野つくしの中華版キャラクター「杉菜」役を演じ、ドラマの爆発的大ヒットによって世界中の華人にその存在を知らしめた。

 その彼女が48歳という若さで、「日本で!」「インフルエンザで!」「亡くなった!」のだから、旧暦正月(1月29日)の「お屠蘇気分」を吹き飛ばすには十分だった。

台湾でインフルエンザに感染し、来日したと思われるが……

 大Sは母親と夫、子ども2人とともに、小S一家と旧暦正月休みを過ごすため、1月29日に日本に到着。台湾を出発する時点で咳の症状があったらしく、そうであれば、インフルエンザに感染したのは日本ではなく、台湾だった可能性が高い。

 到着するとそのまま全員で最終滞在地の箱根温泉に向かったが、翌30日には現地の病院で診察を受けた。その日は最終的に「東京の病院を受診したほうがいい」と言われて病院を離れたが、2月1日に東京の病院に入院、そのまま2日の早朝に亡くなったという。

 家族やマネジメント会社は彼女の死について公式に認めたものの、現時点では日本での足取りについては一切明らかにしていない。マスメディアが伝えた前述のような経過も、実はSNS上で「家族に近い」「S家ガイド」を名乗る人物たちによる情報で、真偽についてはわからないままだ。家族は公開告別式すら行う意志はないと伝えられており、日本に到着してから何があったのか、近いうちに近親者から具体的に公表されることはないだろう。

 だが、ニュースは中華圏に「大Sショック」とも呼べる現象を生んだ。