人気の半面、「女権主義だ」と男性からの反発も

 お気づきだろうか、こうした女性コメディエンヌたちのネタはその多くが結婚や伝統的男性優位社会を皮肉る形で語られる。それが「スタンダップコメディの女権主義」と呼ばれるようになり、一部男性コメディファンから批判が起き始めた。

 これまでで最も大きな反響を巻き起こしたのは、スタンダップコメディエンヌへの注目度を一気に高めた楊笠(ヤン・リー)さんだった。コロナ前からすでにスタンダップコメディアンとしてネットやテレビにも顔を出していた彼女は2020年、「見た目はただただフツーな男が、なんであんなに自信たっぷりなの?」と発言して、女性たちから爆発的な共感を集めたのだ。

スタンダップコメディエンヌの楊笠(ヤン・リー)さんスタンダップコメディエンヌの楊笠(ヤン・リー)さん Photo:VCG/gettyimages

 それと同時にこの発言は、多くの男性たちに「男への挑戦状」と理解された。この言葉がスタンダップコメディの現場を離れてあちこちで話題にされ、分析され、論じられ、批評された結果、楊さんは「男たちの共通の敵」とまで呼ばれるようになった。

 楊さんの人気に目をつけた米インテルが2021年に彼女を同社製ノートブックPCのイメージキャラクターに選んだが、それが激しいインテル製PCの不買運動を巻き起こした。インテルは慌てて彼女が関わったCMをすべて引っ込めたが、インテルを罵る声は止まらなかった(参照記事)。

 そして昨年になって、女性の間で止まらない楊笠人気に目をつけた電子コマースプラットホーム「京東 JD.com」(以下、JDドットコム)が、彼女を同社のイメージキャラクターの1人として採用。JDドットコムは、楊さんにまつわる不買運動は、コロナの期間を挟んだことで峠を超えたと判断したのであろう。しかし、これがまた男性消費者の間で激しい反発を引き起こし、JDドットコム有料会員および金融サービスの解約騒ぎへと発展した。その結果、JDドットコムは楊さんとのサービス契約を解除したことを発表した。