この秋、大きな話題になった二人の中国人女性がいる。一人は海外で主流のお笑い、スタンダップコメディで有名になった30代女性。そしてもう一人は20代の頃から難病に苦しみ、40代で安楽死を選択した女性だ。片や、女性から絶大な支持を受ける一方で男性からは不買運動が起こるほどの大ブーイングが、そしてもう一人には「親不孝」「親への恩返しを考えろ」などのきつい言葉が浴びせられたのだ。一体何が人々を刺激したのだろうか?(フリーランスライター ふるまいよしこ)
「たいしたことないのに、自信満々の男って一体何なの?」
この秋、なぜか中国で次々と、女性たちが話題の中心になっている。
最初に大きな注目を集めたのは、スタンダップコメディエンヌの楊笠(ヤン・リー)さん。10月中旬に大手eコマースサイト「京東 JD.com」(JDドットコム)が、彼女を11月11日の「双11」(ダブルイレブン)ショッピングキャンペーンのイメージキャラクターに選んだところ、激しいブーイングが巻き起こったのである。
楊さんは2020年にネットで放映されたスタンダップコメディアン選抜番組に出演して話題になった。それまで出演者たちのほとんどが男性だった中で、彼女の存在は新鮮だった。さらに、彼女はその「女性」という独特の立場を強く意識した役割を演じてみせた。こう言ったのだ。
「どこからどう見てもたいしたことないレベルなのに、自信満々の男って一体何なの?」
これが、女性視聴者たちに大ウケした。「ホント、その通り」「よく言ってくれた」「わたしもずっとそう感じていた」と大反響を巻き起こし、この回の番組出演者中の最高の得点を獲得した。それが話題になり、続々と多くの女性視聴者を番組に引きつける効果を生んだ。
しかし、騒ぎは男性視聴者からも起きた。「男性差別だ!」と激しい不満が噴出し、「楊笠は差別主義者」といった文言が飛び交い、ネットでは彼女のこの発言を巡って大議論が展開された。ここから彼女を「女権主義者」とするレッテル貼りが始まった。女権主義とは、フェミニズムの中国語訳である。