「エセ科学やスピリチュアルを信じやすくなる人」の特徴とは何か。
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。数々の成功者に接し、自らの体験も体系化し、「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。
コロナ後の生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。
『ゆるストイック』では、新しい時代に突入しつつある今、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、「私自身が深掘りし、自分なりにスッキリ整理できたプロセスを、読者のみなさんに共有したいと思っています」と語っている。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「エセ科学やスピリチュアルを信じやすくなる人」の特徴とは?Photo: Adobe Stock

「科学の影響力」が薄れる時代へ

 かつては、科学や論理、エビデンスが社会の意思決定に強く影響しました。

 そして、客観的な事実や論理的な判断が重要視される社会を目指してきたのです。

 しかし、世界が二極化し、社会がますます分断されるにつれて、科学やエビデンスの社会的な影響力は弱まる可能性が高いです

 これからの時代、個々が自らの判断軸を持ち、何が「正しいか」、何が「間違っているか」を自分で見定めなければならなくなっています

 その中で、客観的な科学や論理は以前ほどの力を発揮できなくなっているのです。

 原因の一つに、二極化により生じた格差や社会的プレッシャーによって、人々の客観的に物事を判断する力(認知力)が変化していることが挙げられます。

 人間は、生存の危機・孤独・不安といった「淘汰のプレッシャー」を受けると、認知力が大きく低下することが知られています。

 追い詰められたときの精神状態は、どんな状態なのでしょうか。

 たとえばIQでは、9~13ポイントも低下することがあるとされ、これは強いアルコールを摂取した状態に近い認知レベルと言えるでしょう。

 こうした精神状態では、冷静な判断や合理的な意思決定が困難となります

 論理やエビデンスがいくら提示されても、必ずしもそれに基づいて行動できなくなるのです。

「非科学的な信念」の正体

 人間の脳は、強いプレッシャーにさらされ続けると2つの極端な状態に陥りやすくなります

 一つは、快楽物質であるアドレナリンやドーパミンが出にくくなり、何事にも満足感や幸福感を感じられなくなる状態、いわゆる「うつ」状態です

 もう一つは、逆にアドレナリンやドーパミンの分泌が過剰になり、迫り来る危機に対抗するために、普段よりも高揚し、極端な行動や非現実的な思考に陥る状態です。

 この後者の状態では、まるで強い酒や麻薬を摂取したかのような精神状態となり、現実には存在しない幻覚や幻聴が現れることもあります。

 この状態では、非科学的な話や神秘主義を信じやすくなり、普通ならば受け入れないような荒唐無稽な思想や考えも受け入れやすくなるのです。

 それが極端な状態に達すると、統合失調症などの精神疾患へと発展することもあります。

 経済格差が固定化し、絶望や困窮に苛まれる人々が増えれば増えるほど、認知の変化によって、非科学的な信念に頼る人々が増加します

 その結果、ポピュリスト・新興宗教・独裁者が支持されやすくなります。

 彼らが発する、「自分たちを救ってくれる」という言葉が、多くの人にとっての「唯一の真実」に映るようになり、それを支えにすることで安心感を得るようになってしまいます。

佐藤航陽(さとう・かつあき)
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)を上梓した。
また、新しくYouTubeチャンネル「佐藤航陽の宇宙会議」https://youtube.com/@ka2aki86 をスタートさせた。