
ドナルド・トランプ米大統領について不平を言うより、同氏の視点から世界を見てみよう。彼の見方によれば、米国は暗愚な国々を民主化するためにほとんど無益な戦争に血と富を費やし、おおむね恩知らずな同盟国に安全保障を提供してきた。米国の経済力と技術面での優位性は、自国よりも敵に恩恵をもたらしてきたグローバル化のせいで損なわれてきた。
このためトランプ氏は米国の経済安全保障を損なってきた環境規制の撤廃を進めている。生産性を低下させてきた「多様性」ブームも終わらせようとしている。大学から米国のノウハウを盗んでいる中国人学生を追い出し、人々が自称する「ジェンダー」が本当の性別であるようなふりをするウォーク(差別など社会的不公正の問題に高い意識を持つこと)の狂気を終わらせようとしている。
トランプ氏はまた、国内産業の生産能力の回復と製薬や情報技術(IT)といった産業の保護、そして大幅な減税を実現するための財源確保のために、高い関税を課している。関税は米国の消費者が国内製品を購入すれば回避できる税金であり、10%を超える関税は米市場への参入と引き換えに外国人が喜んで支払うべき対価だというのが同氏の考えだ。
トランプ氏は、的外れの理想主義と誤った経済政策が米国に損害を与えてきたと信じている。そこで必要なのが米国第一主義の徹底だ。当然ながら、国防費の増額を約束させられた同盟国や、米市場へのアクセスや米市場での競争優位性の一部を失うことになる貿易相手国は非難の声を上げている。だが、この大統領は現実として対処しなければならない存在だ。ならば不満を言うより、正しい教訓を学ぶ方が賢明だろう。