「この人、仕事ができるな」は、毎日のメールで決まる。「相手に間違ったニュアンスで伝わってしまう」「文面がこわいと言われるが、原因がわからない」「メールの返信に時間がかかりすぎて、1日が終わってしまう」。メール仕事には、意外と悩みがつきものです。本連載では、中川路亜紀著『新版 気のきいた短いメールが書ける本』(ダイヤモンド社)から編集・抜粋し、迷いがちなメールの悩みを解決するヒントをお届けします。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

森鴎外の小説でも使われている「おられる」が間違い敬語と言われる理由とは?Photo: Adobe Stock

 ビジネスメールを書く際に、悩みがちな敬語の使い方。ちょっとした表現でも「これであっているのかな?」と不安になることが多く、ネット検索をしても諸説あって迷ってしまいます。
 たとえば、「〇〇さんはおられますか?」という言い方を、よく耳にします。西日本に多いとされていますが、ネット上では間違いと断定する意見、許容範囲とする意見の両方があります。

謙譲語としての「おる」

 一般的には「おる」は「いる」の謙譲語として知られています。

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「私はここにおります」
「昨日はお休みをいただいておりました」

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 というように、自分を低めて表現するつかい方です。

尊敬表現の「おる」もある

 ところが、国語辞典には謙譲語ではない「おる」の用法も載っていて、「いる」「存在する」という意味であると解説されています。この「いる」「存在する」という意味の「おる」に、尊敬の「られる」がついたのが「おられる」です。「おられる」は森鴎外の小説にも尊敬表現として登場しています。日本語表現は、地域や時代によって変化しますが、「おられる」は現在通用している表現なので、間違いと断定するのは正しくありません。

「おられる」が間違い敬語と言われる理由とは?

 ネット上に「おられる」を間違いと断定する意見が出回ってしまったこともあって、その影響で間違いだと考えている人もいます。たとえば、「午後はそちらにおられますか?」と書いてあると「失礼な!」と思ってしまう人がいるかもしれません。相手がどう思うか気になるときは、次のように言い換えると無難です。

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午後はご在宅ですか?
午後のご都合はいかがですか?

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※本記事は『新版 気のきいた短いメールが書ける本』を一部抜粋・編集したものです。