世界中で話題のストイシズムに基づく新しい人生観が身につく
ただの投資本ではない画期的な金融哲学書
そんな感想が全国から届いているのが『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』(スコット・ギャロウェイ著/児島修訳)だ。
どうすれば不運な目に遭わずに投資で成功し、幸福な人生を送れるのか?
今回はマネックス証券チーフ・ストラテジストで大学でも教鞭を執る広木隆氏に寄稿いただいた。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

【投資のプロが激白】ここ数年で最高かつ画期的な「腹落ちマネー本」とは?Photo: Adobe Stock

数多凡百のマネー本と圧倒的に違う点とは?

僕は話が長い。以前からその傾向はあったが、老化とともにますます拍車がかかってきた。俗に言う「年寄りは話が長い」を地で行っている。

先日も講演で話が脱線し、延々とそのままの調子でやっていたら本題に戻る前に講演終了時刻となってしまった。当然、聴衆は怒る。

講演後のアンケートを見ると「結論を先に述べろ!」という文句・苦情であふれていた。もっともなご意見である。

というわけで、ここは禁を破って(別に禁じられているわけじゃないけど)「結論」を先に言おう。

結論:スコット・ギャロウェイ著『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』はズバリ、買いである。

本書を購入しようとする読者は本書に何を期待するだろうか。
「一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式」を知りたくて買うのだとすれば、その目的は「富を築くこと」だろう。では、あなたのその目的は本書を読めば叶えられるのか?

答えはYESである。
この本を読めば富を築くことができる。この本の価値は読者を、「富を築かせる行動」に導く点にある。

逆に言えば、数多凡百のマネー本は、そうでないものが多い(と推察する。僕は数多凡百のマネー本を読んでいないので)。

そのような類書のなかには、そもそも普通の人には実行不能な高いハードルを要求するものもあるだろう。

そんなことができれば、そりゃ金持ちになれるよ!みたいなツッコミどころ満載のものだ。

あるいは「私はコレでお金持ちになりました!」と過去の成功体験を語るもの。ある個人の成功体験というのは、そこから教訓を得られる場合もあるが、たいていの場合、その人固有のケースであって再現性のない場合が多い。

極論すれば運がよかっただけという場合もあって、そんな成功体験を聞かされても役に立たない(運の話はまた別の機会にたっぷりしたい)。

それに対して著者の主張は「富を築くのに、とてつもない高収入も、爪に火を点すような節約も必要ない」(「あとがき」より)。つまり、誰でも実行可能なことが書かれている。

人を行動に駆り立てるものとは?

そんな、誰でも実行可能なことなら、誰もが行ってみんな富を築いているのではないか、それができないから困っているんじゃないの?と思われたかもしれない。

その通りである。実は、その答えも本書は明快に解説してくれている。

もし、意図するだけで何の苦労もなく行動を続けられるなら、誰もが新年の誓いを守り続けられるだろう。(中略)よくいわれているのとは違い、頭で考えればそのとおりに行動できるわけではないのだ。

人は合理的ではない。
百歩譲って、頭では合理的に考えられても、合理的に行動できないのである。

では、そのような人間を行動に駆り立てるものは何か。
それは「ナラティブ」の力だ。

「ナラティブ」とは何か。
詳しく語るには紙幅が足りないので、ここでは極めてシンプルに「ナラティブ」=「物語」としておこう。

本書は決して文章がうまいわけでもないし、構成もはっきり言ってあまり良いとは言えない。しかし、すーっと流れるような文章や構成は読みやすいのは確かだが、それでは頭に入っていくようで実は残らなかったりする。

それに対して、この本はブツブツと途切れるので、引っ掛かり立ち止まる。
あなたの「心」に「引っ掛かり」、あなたの「頭」を「立ち止まって」もう一度、考えさせるのだ。

力づくで「読まされる」理由

様々なエピソードが挿入される。いろいろな人物の言葉の引用も多い。それらは著者自らの言葉で語るよりも説得力がある。それが400ページ続くのだ。決して読みやすいわけではないが、力づくで「読まされる」400ページである。

その結果、どうなるか。読者は「腹落ち」するのである。

この本は前述の通り、
富を築くのに、とてつもない高収入も、爪に火を点すような節約も必要ない
ということを伝える。

言い換えれば、ここで述べられているのは、どれも至極まっとうな、当たり前のことなのだ。

「腹落ちする=センスメイキング」とは?

そんな当たり前のことを、これでもか! と400ページにわたって、いろいろな引用やエピソードとともに語ってきかされると、その言葉のシャワーの圧力に打たれた読者は、間違いなく腹落ちするであろう。

この「腹落ち」だが、英語で言えば「センスメイキング」である。
「センスメイキング」は経営学の分野では非常に重要な理論なのだ。

『世界標準の経営理論』の中で、経営学者・入山章栄教授がこんな話を紹介している。

ハンガリー軍の偵察部隊がアルプスで遭難した際、猛吹雪の中、隊員の一人が偶然地図を見つけた。彼らはそれをアルプスの地図と思い込み、「これで下山できる」と信じて行動を開始した。実際はピレネー山脈の地図だったが、重要なのは地図の正確さではなく、それによって「助かる道がある」という物語を皆が納得し、行動を起こせた点にある。動き出せば、環境からの新たな情報を得て軌道修正も可能となる。彼らはこのストーリーを信じて団結し、結果として生還を果たしたのである。

まず行動を起こすことが重要だ。
実際にやってみれば、難しいこともたくさん出てくるだろう。
そこからは、あなた次第である。

しかし、繰り返し言うが、重要なのは行動を起こすことであり、その行動を起こせるかどうかはセンスメイキング=腹落ちするかしないかにかかっている。

そして本書『一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』は必ずや読者を腹落ちさせると確信する。

ハンガリーの偵察隊は「間違った」地図でも山を下りられた。

ましてやこの本に書いてあることはすべて「正しい」ことだらけだ。
この本は読者が富を築く道をたどる最適かつ最高の地図である。

(本書は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』に関する特別投稿です。)

【執筆者プロフィール】

広木 隆(ひろき・たかし)
上智大学外国語学部卒。神戸大学大学院・経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。2010年より、マネックス証券株式会社 専門役員/チーフ・ストラテジスト。青山学院大学大学院・国際マネジメント研究科で9年間教鞭をとったのち、2023年4月より社会構想大学院大学教授として着任。テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、BSテレビ東京「日経プラス9」等のレギュラーコメンテーターを務めるなどメディアへの出演も多数。