19世紀末~20世紀諸島に建てられた洋館が建ち並ぶ、上海の外灘(ワイタン)地区。上海は昔から海外に開かれた都市だった Photo:PIXTA19世紀末~20世紀初頭に建てられた洋館が建ち並ぶ、上海の外灘(ワイタン)地区。上海は昔から海外に開かれた都市だった Photo:PIXTA

「よくやった!小日本のすべてを反対すべきだ」「歌っている途中にブレーカーを落とすのはやりすぎだ」――高市首相の台湾有事発言をきっかけに激化する日中対立。中国政府の報復措置で、浜崎あゆみさんや大槻マキさんといった日本人歌手のコンサートが突如中止され、中国人は日本渡航を控えるよう言い渡されている。一連の事態に対して、中国の一般市民、特に上海市民はどう考えているのか。厳しいネット規制がある中国でもにじみ出ている、中国国民の本音の声とは。(日中福祉プランニング代表 王 青)

 高市首相の台湾有事発言をきっかけに、日本と中国の間に緊張関係が続いている。中国政府は報復の対抗措置として、自国民に「日本への渡航を控えるよう」と呼びかけた。また、日本の水産物の輸入停止を決定し、事実上の貿易制限措置を下した。さらに、文化や人的交流にも制限をかけ、日本人アーティストや日本関連の文化イベント、コンサートなどの中国での公開中止も相次いだ。この一連の騒動に対して、一般の中国国民はどのような思いを抱き、どう感じているのか。

 中国の厳しいネット言論規制がある中でも、「もう勘弁してください、不利を被るのはいつも我々庶民ではないか」というような声がたくさん漏れている。

突然消えた照明、舞台から退場させられた歌手

 11月28日の夜、上海で開かれた「バンダイナムコフェスティバル2025」で、「ONE PIECE」主題歌などで知られる日本人歌手・大槻マキさんがマイクを持って熱唱している真最中に、突然、照明が消え音楽が止まった。数名のスタッフが舞台に駆け足で上がり、大槻さんの耳元に何かを告げると、大槻さんは突然の出来事に困惑し、驚愕した様子を見せた。その一部始終は、その後拡散された動画にはっきりと映っていた。

 会場にいた観客がスマホで撮った動画は瞬時にSNSで拡散され、各SNSの注目ランキングで上位を占めた。動画の中で、大槻さんが退場させられる姿を見た観客の一人は、上海語で「一刀切!一刀切!」(状況を問わず、とにかく一律に乱暴に扱うという意味)と連呼し、「すごいなー、人生においてこの瞬間を見届けることができた!」と興奮した声で叫んだ。

 動画は急速に拡散されるとともに、コメント欄にはおびただしい数のコメントがつづられた。「よくやった!支持する!小日本(日本への蔑称)のすべてを反対すべきだ!」などと、いつものように愛国心の強いネットユーザーが声高に主張している一方で、それよりもずっと多かったのが、批判的な意見だった。