一方で、同270kWと550Nmを発揮する3L・V6ターボを搭載するS5は、V6らしいちょっと重厚なエンジンサウンドと力強く伸びやかな吹き上がりも印象的だ。性能的にも、さすがは0→100km/h加速が4.5秒と他より圧倒的に速いだけのことがあった。

セダンやワゴンを選びたい
ユーザーの目を引く存在

 もうひとつ印象的だったのが、TFSIにはなくS5に採用された新しいハイブリッドシステムの“MHEV plus”だ。完全な電動走行を可能にしており、発進時や低速走行時のちょっとした移動をモーターだけでこなせるほか、内燃エンジンでの走行中にも適宜、加速をサポートするので燃費にも貢献が期待できる。このMHEV plusが思ったよりも活躍するシーンが多いことも印象的だった。

 セダンもハッチゲートを備えた関係で、リアから侵入する音や車体剛性の差が小さくなったからだろうか、セダンとアバントの走りの違いは思ったよりも小さかった。かつてはアバントのほうがリアに硬さを感じたこともあったが、新型A5はそうでもなく、やや重さを感じるぐらいの違いしかない。

 なお、クリーンディーゼルのTDIに関心のある人も多いだろうが、少し遅れて日本にやってくる予定という。最高出力がTFSIの上位グレードと同じ150kWで、最大トルクはより大きい400Nmを発生し、0→100km/h加速の公表値は6.9秒となかなかの俊足ぶり。そちらも楽しみに待ちたいと思う。

 また、新型A5ではクワトロシステムについても従来から大きな変更があり、セルフロッキングセンターデフを有しない仕組みとなったのも新しい。これについては、アウディが求めるパフォーマンスを実現しながらも、よりシンプルになったと思ってもらってよいだろう。

 このところ全体的に価格が上昇ぎみのところ、これだけ充実した内容で、意外と上がり幅が小さく抑えられたことも歓迎する。魅力的なセダンやワゴンがめっきり少なくなったこのクラスにおいて、セダンやワゴンを選びたいユーザーの目を引く存在となりそうだ。

(CAR and DRIVER編集部 報告/岡本幸一郎 写真/竹内龍男+AUDI)

CAR and Driverロゴ