人からの評価ばかりが気になって、自分のことをなかなか認められない。そんな生きづらさを抱えている人にこそ届けたいのが、『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(ジェニファー・L・タイツ著、久山葉子訳)だ。マインドフルネスや認知行動療法などを土台に、自分に合った対処法が見つかる構成が本書の特徴だ。そこには、ありのままの自分を受け入れやすくなるヒントが詰まっている。本書を「今を生きるすべての人におすすめしたい。それぐらい、幅広い悩みに対応できる本だ」と語るのが、精神科医・禅僧の川野泰周氏。今回は「自己肯定感」をテーマに、川野氏に話を聞いた。(取材・構成/ダイヤモンド社・林えり、文/照宮遼子)

自己肯定感が低い人に共通する「心のクセ」とは?
――自己肯定感が低い人には、どんな共通点がありますか?
川野泰周(以下、川野):そもそも、「自己肯定感」とは、「自己承認」を意味します。つまり、「あるがままの自分で大丈夫」と認められる心のあり方です。
自己肯定感が低い人は「こうあるべきなのにできていない」「もっとがんばらないと」という「自分を否定する思考パターン」に陥りがちなのです。
――自己肯定感が低くなってしまうのには理由があるのでしょうか?
川野:私たちは誰しも親や社会から、「こうあるべき」と期待されて育ってきた側面があります。そして学校でも塾でも、できなければ悪い評価がつく。その繰り返しで、自己肯定感が揺さぶられるんです。
とくに学校の成績や結果にシビアな環境で育つと、どうしても「もっとがんばらないと」という思考パターンが根づくわけです。
安定した自己肯定感は「自分への優しさ」から生まれる
――だから、いつも人に認めてもらっていないと不安になるんですね。
川野:そうですね。「人から認められたいという気持ち」がいわゆる「承認欲求」であり、「自尊心」を維持するためにも必要な心の作用です。
しかし、承認欲求を満たすことばかりに執着してしまうと、「不安定な自己肯定感」が形成されがちです。
人からの評価に自分の存在価値を委ねてしまうと、どうしても自己肯定感が上がったり下がったり、揺れが大きくなります。
――評価されないと気持ちが揺らぐのはそのせいなんですね。
川野:本当に安定した自己肯定感は、「セルフコンパッション(自慈心)」つまり、「自分への優しさ」から生まれます。
外からの評価ではなく、自分の内側で「ありのままで大丈夫」と思える心。それが安定した自己肯定感の土台になるんです。