
最低限の仕事しかしない「静かな退職者」は、どうしてそうなってしまったのか? 筆者は一種の「沈黙の抗議」ではないかと考察している。同僚にそんな人を見つけた時、「個人の怠惰」や「甘えの問題」として捉えたり、糾弾や無視、のけ者にしたりするのはご法度。ではどうすればいいのか。連載第15回では心理的なメカニズムと職場の対処方法を伝授する。(人材研究所ディレクター 安藤 健、構成/ライター 奥田由意)
表面的には無関心や諦めに見える
内心はもっと複雑
「別に評価されなくていいし……」。あなたの職場には、必要最低限の仕事はするけれど、それ以上の工夫を凝らしたり、評価を上げようと熱心に働くことを避けたりする、そんな同僚はいませんか?
前回は、こうした「静かな退職」を選ぶ人について、組織への影響、当人のデメリットなどについて詳しく解説しました。
多くの真面目に働いている人にとっては、本人にとってはデメリットしかない「静かな退職」を、わざわざ選択するのはなぜなのかという疑問をお持ちかもしれません。
どうしてそこまでして会社に居続けるのかについては、転職への不安が理由として挙げられることも多いのですが、表面的には無関心や諦めに見える行動の背後に、実はもう少し複雑な心理的なメカニズムが働いている可能性があると私は考えています。
それをひもとくべく、「静かな退職者」の心の深層をさらに深く分析してみたいと思います。
その前に念頭に置くべきなのは、彼ら全員が、最初から必要最低限の仕事しかしたくないと思っていたわけではないということです。これまで延べ1000人以上の就職活動中の学生や新卒の就活生を支援してきた経験から断言できるのは、最初から「必要最低限の仕事しかしたくない」と考えている人はまずいないということです。
社会に出る前の多くの若者は、自分のキャリアの可能性を信じ、自分たちに合った仕事を真剣に探しています。
ところが、そういう気持ちを持っていた人たちが、入社して3年もたつと少なからず静かな退職者になってしまう。これは、あくまで私の個人的見解ですが、静かな退職という行為は一種の「沈黙の抗議」ではないかと考えています。