以下が、書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』で紹介している解説と回答です。
AIの回答は正しいのか、確認してみましょう。
「勝利の条件」は何か?
勝利条件は、「自分が相手より後にゴールすること」のように見えます。
だから2人は、のろのろと時間をかけて走っているのだと。
ですが、王様の発言をしっかり見てみましょう。
“勝った馬の主の方に宝を与える”
「勝った人」ではなく、「勝った馬」と言っているのがポイントです。
つまり勝利条件は「自分の馬が後でゴールすること」です。
これは言いかえると……
「相手の馬が先にゴールすれば勝てる」
ということです。
発想を転換させると
この勝利条件に目を向ければ、あとは簡単です。
つまり、お互いの馬を入れ替えてレースをすれば、その馬で先にゴールした方が勝ちになります。
要するに、ふつうのレースになります。
賢者はこの方法を提案したため、2人は全速力でゴールに向かったわけです。
「お互いの馬を入れ替えてみて」
ということで、AIの回答は正解でした。
この問題からの「学び」は?
この「のろのろ馬レース」の問題には、論理的思考・問題解決・視点の転換において、以下の学びが含まれています。
①:「ルールは変えずに、解釈を変える」という発想
この問題のルールは、「後にゴールした馬の主が勝ち」。この条件を変えずに、どうすれば前に進むのか?というのが本質的な問いでした。つまり、「ルールが悪い」と言って否定するのではなく、「このルールのもとでどう振る舞えばよいか」を考える。
これは、現実のビジネスや組織の中でも重要な思考態度です。制度や制約条件を変えられないとき、「その中で最適解をどう作るか」という柔軟な思考が、この問題から得られます。
②:「目的と行動の逆転が起きたとき、人は動けなくなる」
王様のルールでは、「勝ちたいなら遅く走れ」という逆転が起きていました。その結果、プレイヤーは「何もできない」状態になります。
これは、現実の世界でもしばしば起きます。たとえば、「ミスをすると評価が下がる→新しい挑戦を避ける」「評価は効率で決まる→効率だけを優先して本質的価値を見失う」といったように、行動と目的がねじれたとき、人は動けなくなります。その構造をどうほぐすかを考える視点と思考を、この問題から得られます。
③:「視点を変える」ことで、問題は一気に解ける
この問題での転換点は、「馬を交換する」というアイデア。馬を交換することで、「遅く走る」から「速く走る」へと行動が一変します。これは、
いわゆる「フレームを外す」という思考技法です。「自分の視点」だけでなく「相手の立場」や「第三者(賢者)の立場」から見る。「馬」ではなく「馬の主」に注目してルールを再解釈する。など、問題の枠組みを見直すことで閉塞状態を一気に打開する思考が、この問題から得られます。
このように、「前提を読み解き、解釈をズラし、行動を導く力」が楽しみながら得られる問題でした。
※本記事の問題は書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から抜粋しています。同書ではこういった「考える力が高まる問題」を67問紹介しています。