「藤岡とうふ店」と関係会社「おとうふ家族」の本社「藤岡とうふ店」と関係会社「おとうふ家族」の本社(帝国データバンク撮影)

「物価の優等生」のひとつとして日本の食卓を支えてきた豆腐で、中小メーカーの倒産や廃業が急増している。スーパーやコンビニなどの小売店向けに、パック豆腐などを生産する「豆腐店」の倒産(負債1000万円以上、法的整理)と廃業は、2024年は7月までで36件発生した。過去最多の件数を記録した2023年の年間合計(46件)を大きく上回るペースで推移しており、2024年は年間60件台に到達する可能性がある。(帝国データバンク 情報統括部 情報編集課長  内藤 修)

創業100年超の
豆腐メーカーが破綻

 1922年創業の豆腐メーカー「戸塚豆腐店」(静岡県焼津市)は、7月29日に静岡地裁より破産手続き開始決定を受けた。同社は、佐賀県産や新潟県産などの国産大豆と赤穂の塩田にがりを使い、昔ながらの手法で手作りの国産木綿豆腐を長年にわたり製造してきた。

 枝豆豆腐や紫蘇の葉豆腐、寄せ豆腐、まんじゅう豆腐、豆腐ドーナツ、茶のドーナツ、カツオのドーナツなどの各種豆腐製品も扱った。手揚げの油揚げ、生揚げ、生湯葉、豆乳プリンなどの製造も手がけ、スーパーマーケットや各種小売店などを対象としていた。

 品質や衛生面への取り組みとして工場は静岡県ミニHACCPを取得、国産大豆を使用する原材料へのこだわりを含めた品質重視の姿勢が評価され、2012年4月期には年売上高約4200万円を計上していた。

 しかし、その後は原材料が高騰するなか売価への価格転嫁も進まず、長らく低収益を余儀なくされた。この間、借入金の返済猶予を受けながら凌いでいたものの、原材料価格がさらに上昇するなか、大手同業者との競合も厳しく採算が一段と悪化。2023年5月には一部得意先との取引が終了するなど先行きの見通しが立たなくなったことから、同年7月に事業停止に追い込まれた。