今回は、2019年1月に経営破綻した老舗洋菓子メーカー「シベール」を取り上げる。創業から50年超、ラスクブームの火付け役にもなった同社は、なぜ倒産に陥ったのか。その裏には、社長が読み間違えてしまった「成功体験の罠」があった。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)
創業50周年超、老舗洋菓子メーカー
「シベール」の倒産
今回は、老舗洋菓子メーカー「シベール」の倒産を取り上げる。
シベールは、和菓子屋の長男として生まれた熊谷眞一氏が1966年に山形市で創業した洋菓子メーカーである。当初の主力商品はケーキだったが、その後パン製造へと進出。その過程で作りたてのフランスパンを加工した贈答用のラスク「ラスクフランス」が大ヒットし、売上高が急拡大した。
その後、2005年7月にはジャスダックに株式を上場し、首都圏にも出店を行うなど業容を拡大するが、19年1月17日に民事再生法の適用を申請し、倒産することとなった。
ラスクの大ブームの火付け役となったシベールが経営破綻に至った経緯と理由はどのようなものだったのだろうか。04年8月期から倒産直前の18年8月期までの15期分の決算書データを使って読み解いていくことにしよう。