みんな大好き「オルカン」だけでは危険? 暴落に強い「投資の王道」とは?
東京大学大学院卒業後、ゴールドマン・サックスに入社。30代にして上位数パーセントの幹部、マネージング・ディレクターに就任し、アジアのトレーディングチームを率い、巨額の利益を上げた。その後、200兆円超の運用残高を誇る世界有数の機関投資家・ゆうちょ銀行で投資戦略を牽引。そんなマーケットの最前線を知り尽くしたトップトレーダーが、個人投資家が一生使える「オルカン」「S&P500」の“次の投資術”を徹底指南した初の著書『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)。投資初心者でも実践できるよう、徹底的にわかりやすく投資手法を体系化。ゴールドマン・サックス仕込みの「投資思考」「オルカン+4資産均等型」といった実践的なポートフォリオ(資産配分)の構築方法有望な個別株の見つけ方まで、すぐに役立つノウハウが満載!

【ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが教える】「100%オルカン」で老後資金が半分に!? 資産を守る人が選ぶべき“4つの軸”とは?Photo: Adobe Stock

「全部買い」戦略の次に考えるべきこと

世界中の金融資産を全部買いする」という投資戦略は有効な考え方です。

そのうえで頭に入れておきたいことは、具体的にどの資産にどれくらい配分すればよいか、ということ。

こうした資産配分のことを「アセットアロケーション」といいます。

「NTT株にいくら」はまだ早い

アセットアロケーションを考える際、いきなり「NTT株にいくら」というような細かいレベルで考えてはいけません。

まずは大まかに「資産クラス」というレベルで考えます。

一般的には「日本株式」「外国株式」「日本債券」「外国債券」という4つの資産クラスに分けて配分を決めていきましょう。

資産配分はリスク管理の第一歩

この4つの資産クラスをどのように振り分けるべきかは、後回しにして、まずはリスクをコントロールするうえでアセットアロケーションが重要であることを事例から押さえておきましょう。

オルカン1本勝負の落とし穴

個人投資家に人気の投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)などのグローバル分散・パッシブ投資が王道ですが、誰しもがオルカンだけに全財産を投じれば正解かというと、そうではありません。

オルカンは全世界株式に分散投資できますが、資産クラスという大きなくくりでは分散しているとはいえません。

世界経済への強いショックが起きて株式が全体的に大きく下落した場合、オルカンだけ持っている人は資産が減ってしまいます。

株式市場の「下落の現実」

過去を振り返ると、株式市場は常に右肩上がりで上昇しているわけではなく、数年に一度は2割程度下落しています。

10~20年程度のスパンで考えると、リーマンショックのような事態が起きて5割程度下落することも想定しておくべきです。

老後資金と暴落リスク

こうした意味から、老後に備えた資産形成のための投資で、100%オルカンに投資するのは、ややリスクが高いといえます。

もしもあなたが前期高齢者となる65歳を超えて、いよいよ老後資金が必要なタイミングで、不運なことに経済恐慌が起きたらどうなるでしょうか。

株価が5割下落し、オルカンの価値が暴落したら、相当困ります。年齢に応じたリスク管理についてはあらためて解説しますが、特に高齢期に投資資金を株式市場へすべてつぎ込むのは危険です。

債券という「もう一つの安定軸」

そこで着目したいのが、「債券」への投資です。債券は不況に強いとされており、株式とは違う値動きをします。

そのため、それぞれの状況に合わせて株や債券に資金を割り振っていくことが有効です。

「株」と「債券」どう配分する?

とはいえ、いざ「どれくらいを株式に、どれくらいを債券に回せばいいのか?」と考えると迷ってしまうことでしょう。

そこで参考にしたいのが、日本人の年金基金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオです。

GPIFは、運用方針や資産配分の考え方をウェブサイトに掲載してくれています。

まずは「4分の1ずつ」から始めよう

これを見ると、GPIFの基本ポートフォリオは4資産均等型(日本株式25%/外国株式25%/日本債券25%/外国債券25%)が採用されていることがわかります。

まずは、このシンプルな4資産均等のアセットアロケーションこそが、リスク管理を考えるうえで最初の起点になることを押さえておきましょう。

※本稿は『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。