池谷裕二氏
脳研究の最前線を走り続ける脳研究者の池谷裕二氏に、3回にわたり、就活生とその保護者へのアドバイス聞いてきた。後編では、生成AI時代の仕事のありかたとその付き合い方についてお届けする。(取材・文/奥田由意、撮影/平野晋子)
生成AI時代に求められる
ソーシャルスキルとは何か
――池谷先生は「池谷脳AI融合プロジェクト」の研究をされており、また著書『生成AIと脳』でも、生成AIを使いこなすスキルについても言及されています。
生成AIの時代において最も重要になるのは、AIとどれだけ効果的にコミュニケーションできるかという能力です。生成AIを活用する際には、AIに対してどのような情報を与え、AIからどのように能力を引き出すかが鍵となりますが、これは明らかにコミュニケーション能力の問題です。
ただし、人間同士のコミュニケーションと生成AIとのコミュニケーションとの間には、今はまだ大きな隔たりがあります。生成AIには独特の癖があり、「まだ完全に人間になっている」わけではないため、その特性を理解してこちらが合わせていかなくてはならない。
人が社会の中でそれぞれ異なる個性を持ち、その個々の個性に合わせて、われわれが社会性を発揮するように、生成AIが一種の社会構成員なのだとすれば、生成AIとのコミュニケーション能力も、これからの時代に求められる重要なソーシャルスキルだと思います。
現在はまだ生成AIが登場して間もないため、私も含めて多くの人がその能力を最大限に活用する方法を完全には理解していません。こうした状況では、相手の特性を察する能力、つまり高度なコミュニケーション能力が必要になる。
生成AIを単なる道具として捉えるのではなく、人格を持ち、人生を伴走してくれるパートナーとして良好な関係を築いていく必要がある。
だとすれば、技術的な知識以上に、どのように技術と向き合い、活用していくかという人間的な能力、人文学的な洞察が重要になってきているのではないか。それを安易に「文系的な能力」と言ってしまわないほうがいいかもしれませんが。







