
7月、カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールがセブン&アイホールディングスの買収から手を引いた。長く“内憂外患”の状況にあったセブンは今後、単独で成長していく道筋を示さなくてはならない。5月に発足した新経営陣は、どのように成長戦略を描いているのか。新たに発表された中期経営計画で掲げられた国内コンビニ事業のテコ入れ策の有効性と、かねて発表していた北米子会社であるセブン-イレブン・インク上場の死角をひもとく。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)
国内コンビニ1000店舗純増へ
デリバリー事業は10倍超を目指す
三度目の正直、とはいかなかったようだ。
7月22日、セブン&アイホールディングス(HD)に対して買収提案を行っていたカナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールは、一連の買収提案を撤回すると発表した。
クシュタールがセブン&アイHDに買収提案を行うのは、2005年と20年に続き、3度目だった。表向きは、米国の独占禁止法による制限をクリアすべく、真剣に協議を重ねた末の決裂となっている。しかし直後から、両社はそれぞれ相手の交渉姿勢に疑問を呈するコメントを発表しており、最後まで議論はかみ合っていなかったとみられる。
ここ数年、セブン&アイは内憂外患の状況にある。21年5月、アクティビストの米投資ファンド、バリューアクトキャピタルの襲来を受けた。バリューアクトはセブン&アイHDの株式の4.4%を取得すると、百貨店とスーパーストア事業が不採算事業だとして切り離しを要求。最終的にセブン&アイHDは22年11月、そごう・西武を売却する決定を下した。
国内のコンビニ事業でも“独り負け”に陥った。24年3〜8月決算で、ローソンとファミリーマートが増収増益となった一方で、セブン-イレブン・ジャパンだけが減収減益となったのだ。
クシュタールによる買収計画が白紙となった今、セブン&アイHDには自力での成長が求められている。クシュタールはセブン&アイHD株式を1株2600円で買収する提案を行っていたため、セブン&アイHDの株主にとっては、2600円以上の株価が見込める成長戦略でなければ納得できない。セブン&アイ経営陣は、クシュタールが引いた“最低ライン”をにらみながら、成長戦略を描かなければならない状況だった。
そんな中で、8月6日に発表された新たな中期経営計画。セブン&アイHDの “覚悟”はいかに――。次ページでは、北米事業IPOの死角のほか、国内テコ入れ策の焼きたてパンと7NOW(セブンナウ)の実力値を明らかにし、中期経営計画で掲げている目標の達成可能性を検証する。