
5月1日、セブン-イレブン・ジャパンの新社長に執行役員兼建築設備本部長だった阿久津知洋氏が就任した。国内コンビニエンスストア事業が伸び悩む中、セブンをどう変えていくのか。阿久津氏がインタビューに応じ、前体制での下降の真因や今後の出店計画を激白した。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)
セブンの客数だけが減少
「上げ底問題は確かにあった」
――5月1日に社長に就任してから約1カ月半がたちました。感じている課題や手応えはありますか。
現状を踏まえると、私たちは非常に厳しい環境にあると思っています。特に、セブン-イレブンに対する消費者の好意度です。要するに、「セブンは良い」と思っていただいているかどうかについて、大きな課題がある。その課題を真摯に受け止めて改革を進めていかなければいけないと思っています。
社長に就任してから、各エリアの現場の社員と座談会を行い、会社の評判が悪いことに対して、今後、商品やプロモーションにどう取り組んでいくのかについて話しました。そして、その場で社員に意見を求めると、一瞬、場が凍り付くんです。
実はこれが今のわれわれの状況を表しています。歴史的に見て、セブンはトップの指示で動いてきました。現場は「トップは一体何をしようとしているんだろう」と、指示を待っているのです。
もちろん、トップとしてメッセージを発することは重要ですが、一番やらなければいけないのは、現場の社員自ら考えることです。座談会では、現場から良い意見も出てきました。これまでのカルチャーでは、現場は思考を止めていた。就任して1カ月半で、これまでのカルチャーを変えていけるという手応えを得ています。
――永松文彦前社長の時代に、実物以上にいちご果肉が入っているように見えるドリンクのパッケージや、本当はのりがついていないのにのりで巻かれているように見えるおにぎりなどが消費者から問題視されました。商品企画はどう変えていきますか。
正直、“上げ底弁当”といわれるように、問題はあったと思っています。それがお客さまの信頼を裏切る形になって、今の好意度に影響している。そして、問題を認めた上で発信できなかったことにも課題があったと思っています。
昨年、商品総点検というプロジェクトを立ち上げて、今ある商品の全てをチェックしました。ポイントは商品部の社員ではなく、オペレーションの社員が担当したこと。企画側からではなく、お客さまから見たときにそれがどう見えるのかを精査しました。商品総点検が終わり、現在は毎週、発売前の商品についてオペレーションの社員が確認する仕組みになっています。
その前提がある上で、企画の部分も変えていく。今、セブンは消費者からどう見られているかについていえば、味についてはおいしいと思っていただけていると考えています。ですが、いつお店に行っても同じような商品が並んでいて、「優等生だけど面白くない」と思われているのでは。今、お客さまが求めているのは、ちょっと飛び出たような新しさや面白さです。今後は「優等生だけど面白いやつ」と思われることを目指します。
――5月の既存店客数を見るとセブンだけが前年比2.3%減で、ローソンは同0.9%増、ファミリーマートも同0.1%増でした。なぜセブンだけが伸び悩んでいるのでしょうか。
次ページでは、内部資料から判明した客数の減少が著しいエリアを明らかにし、阿久津社長が今後のドミナント戦略や店舗設計について激白する。