個人投資家の間で大きな支持を集めるのが『株トレ』シリーズだ。シリーズ第2弾の『株トレ ファンダメンタルズ編』では、60題のクイズを通じて「業績や財務の読み方」を学ぶことができる。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの窪田真之氏。本稿では、「高配当株の選び方」について教えてもらった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

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高配当株を選ぶための3つの条件

―― 高配当利回り株は、どのように選べばよいでしょうか?

窪田真之(以下、窪田):まず知っておいてほしいのは、株の配当利回りは確定利回りではないということです。

 業績が悪化すれば減配になり、利回りは下がりますし、株価も下落します。

 そのため、単に配当利回りが高い銘柄を選ぶのではなく、長期的に減配しにくい銘柄を選ぶことが大切です。

―― 減配しにくい銘柄には、どんな特徴がありますか?

窪田:3つの条件があります。

 ①時価総額が大きい

 ②収益力が安定的

 ③財務が良好

―― 高配当利回り株は、この3条件を満たす銘柄を選べばいいのですね。

窪田:理想はそうですが、収益力や財務まで見るのは大変ですね。

 そこで「①時価総額が非常に大きい」ことだけ重視する方法もあります。

 例えば、時価総額5兆円以上の大型株を選べば、だいたい②と③の条件をクリアしていると考えられます。

 収益力や財務に問題があれば、そもそも時価総額5兆円以上にはなれません。

小型の高配当株を狙うチャンス到来か?

窪田:ここ3年、大型株ばかりが買われ、小型株の低迷が続いてきました。

 大型の高配当利回り株は、株価が大きく上昇した結果、配当利回りがやや低下しています。

 例えば三菱UFJフィナンシャル・グループは、2年前には配当利回りが4~5%ありましたが、今は利回りは3%台です。

 一方、小型の高配当株は、株価低迷が続いた結果、今でも配当利回り4%~6%で、業績も財務も良い銘柄がたくさんあります。

 今年に入ってから、久しぶりに小型株を見直す流れが出始めています。

―― では、今は大型株より小型株のほうが狙い目ですか?

窪田:はい。ただし、注意が必要です。

 小型株は大型株と違い、収益力や財務内容をしっかりと見極める必要があります。

 財務に問題がある企業や収益力が弱い企業は、非常にリスクが高いです

 そこで、次のクイズで、小型の高配当利回り株を選ぶ方法をお伝えしたいと思います。

 クイズに挑戦してみてください。

【株のセンスを鍛えるクイズ】
小型の高配当利回り株、どれを選ぶ?

 製造業A社、B社、C社、D社は、どれも時価総額が1000億円に満たない小型株で、予想配当利回りが4.5%と魅力的です。

 この中で長期投資するとしたら、どれが良いと思いますか?

 2社を選んでください。

高配当投資は小型株にチャンス到来か? 株のプロが「高配当株を買う前に見ている数字」小型株の高配当利回り銘柄4社のうち、2社に投資するならどれを選ぶ?

【ヒント】
小型株を選ぶ際に気を付けること

 4社とも、株式時価総額が1000億円に満たない小型株です。

 時価総額1兆円以上の大型株ならば、財務も収益力もそこそこ良好と考えてOKです。

 ところが、時価総額の小さい銘柄の場合は、そうはいきません。

 財務内容や収益力をきちんとチェックする必要があります。

 営業利益率や自己資本比率、最高益をあげた年度を見ながら、判断してください。

クイズの正解は…

 投資するなら、C社とD社を選ぶべきです。

 C社は自己資本比率も営業利益率も高いので、財務も収益力もしっかりしていると考えられます。

 D社は3期連続で最高益をあげているので、成長性に期待して投資して良いと思います。

D社:成長性のある割安株として評価

 D社は3期連続で最高益をあげています。

 成長性の期待できる高配当利回り株として投資して良いと思います。

 なお、A社、B社、C社は、小型成長株ではありません。

 最高益をあげた年度が古い(2000年度、1991年度、2007年度)からです。

 長い年月最高益を更新できていないということは、成長のためのビジネスモデルができていないと思われます。

 成長株とは言えないA社、B社、C社については、割安株として評価して良いか判断するために、財務内容と収益力のチェックが必要です。

C社:財務良好、収益力も高い

 C社は、自己資本比率がきわめて高いので財務は良好と考えられます。営業利益率が22%なので、収益力も良いと考えられます。

 本当は、自己資本比率だけで判断するのは危険です。

 自己資本比率が高くても財務に問題のある会社はあるからです。とは言え、C社は自己資本比率が82%ときわめて高いので、財務は問題ないと考えてOKです。

 営業利益率について、本当はたった1つの期を見ただけでは収益力を判断できません。

 少なくとも4~5年の変動を見る必要があります。

 たった1つの期のデータしかないので確信できませんが、営業利益率は22%と高いので、収益力も良いと考えられます。

 成長性はないものの安定収益を稼げるビジネスを有していると推定されます。

A社:自己資本比率が低すぎる

 A社の営業利益率は10%と、比較的良い水準ですが、自己資本比率が8%と、製造業としては低過ぎます。

 財務が悪化しているので、投資は避けるべきです。

B社:営業利益率が低すぎる

 B社は自己資本比率が48%あるので財務良好と推定されますが、営業利益率が低すぎます。

 利益率1%では、景気が悪化した時に、赤字に転落することもあります。