浅草寺で着物を着て写真撮影する中国人観光客浅草寺で着物を着て写真撮影する中国人観光客 Photo:AFP=JIJI

高市首相の台湾有事発言を受け、中国政府が自国民に対し日本への渡航自粛を呼びかけ、旅行会社も販売停止に動き始めた。中国人観光客は約2兆円規模の需要を生み、日本経済にとって最大級のインバウンド市場である。すでに失速気味だった訪日需要に追い打ちとなれば、景気下押しを通じて日銀の利上げ判断にも新たな不透明要因をもたらしかねない。(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔)

高市首相の台湾有事発言に対し
中国政府が日本への渡航自粛呼びかけ

 既報の通り、中国外務省は11月14日、自国民に対して当面の間、日本への渡航を自粛するように呼びかけ、16日には中国教育省が自国民に日本への留学計画を慎重に検討するよう求める通知を公表、17日には中国の複数の大手旅行会社が日本旅行の販売を停止したことも報じられている。

 台湾有事が集団的自衛権を行使可能な「存立危機事態になり得る」とした高市首相の国会答弁への対抗措置である。

 経済への影響としては直感的に訪日外国人(インバウンド)消費の減少を通じた国内景気への下押し圧力を懸念する話になり、ひいては日銀の挙動に影響する恐れも視野に入る。一部報道によれば、すでに団体旅行客のキャンセルは出始めているという。

 次ページでは、中国の観光客の減少が日本経済に与えるインパクトを分析し、その日本銀行の金融政策への影響を検証する。