社会的な「成功レール」の崩壊、どんどん不確実になる未来、SNSにあふれる他人の「キラキラ」…。そんな中で、自分の「やりたいこと」がわからず戸惑う人が、世代を問わず増えています。本連載は、『「やりたいこと」はなくてもいい。』(ダイヤモンド社刊)の著者・しずかみちこさんが、やりたいことを無理に探さなくても、日々が充実し、迷いがなくなり、自分らしい「道」が自然に見えてくる方法を、本書から編集・抜粋して紹介します。

「やりたいことがない」が最大の武器になる! 目標を持てない人の成功パターンPhoto: Adobe Stock

目標がないほうが幸せになれる「積上型」

「積上型」とは、一言でいうと、「夢」や「目標」、「やりたいこと」を持とうとすると、可能性が狭まったように感じて息苦しくなるタイプのことです。

積上型の人は、「5年後、どうなりたい?」という質問に答えられません。明日、何が起きるかわからないのに、5年後のことがわかるわけがないと思うのです。本書の読者は、「やりたいことが見つからない」と悩んでいる方が多いと思うので、こちらのタイプのほうが多いかもしれません。

積上型の人は、一つひとつの選択の積み重ねの先に将来があり、日々の選択を積み重ねて進化していきます。今日の選択で進化し、明日の選択でさらに進化します。つまり、昨日立てた目標は、今日には既に過去の未熟な自分が立てた古い目標になっているのです。そんな古い自分が決めたことに縛られる必要はありません。

積上型の人生はあらかじめ決められた目的地に向かう旅ではなく、道中での発見や出会いを楽しむ探検です。計画を立てないからこそ、思いがけなく世界が広がり、未知の分野との遭遇を楽しむことができます。

「積上型」の基本的な特徴

1│多様な経験や人との出会いによって視野が広がる
自分の常識を壊すほどの異文化経験や、異なる背景を持つ人々との交流により、視野が広がり、いろいろな角度からものを考えられるようになります。

2│偶然に身を任せることで新しい世界への扉が開く
突然の異動があっても、それを前向きに捉え新しい役割に挑戦したり、友人に誘われて始めた趣味が新しいキャリアにつながったり、たまたま出会った本がきっかけで新しい分野の勉強を始めたりと、偶然の変化を自然に受け入れます。

3│直感や今の感覚を重視して前進する
論理的分析より自分の直感やその瞬間の興味関心を重視します。例えば、転職の際に給与や地位よりも「今の自分に合っている」という感覚を基準にしたり、旅行する際に、事前の計画よりそのときの気分で行き先を決めたりします。

4│小さな成功や進歩の積み重ねで成長する
新しい技術を少しずつ習得していくことや、日々の業務を少しずつ改善していくことで、次に何を身につけて、何に取り組めばいいのかを理解します。

5│柔軟な計画変更で困難を切り抜ける
固定的な計画にこだわらず、状況に応じて柔軟に変更します。トラブルが起きても問題視せず、新たな状況下での最善の選択を考えます。計画は変更可能なガイドライン程度と考えて、すぐに気持ちを切り替えて行動に移せます。

6│多様な可能性に向き合う
自分の将来に対しても多様な可能性を考えます。「こうでなければならない」という固定観念がなく、様々な選択肢を探ります。例えば、キャリアを考える際も、1つの道筋にこだわらず、複数の選択肢を並行して検討したり、全く異なる分野への転身も視野に入れたりするので、多くの可能性の中から道を選ぶことができます。

「積上型」の特徴が暴走すると……

1│長期的な方向性が見えないことによる不安
人生の方向性が定まらず、漂流感によって不安になることがあります。

2│優先順位の設定の難しさ
様々な興味や機会に惹かれ、何を優先すべきかの判断が難しい場合があります。

3│成果が見えにくいことによる自信のなさ
小さな進歩の積み重ねによって成長するため、大きな成果として可視化しにくく、自分が成長できていないのではと自信がなくなることがあります。

4│他者からの理解を得にくい歯がゆさ
明確な目標や計画を持たないため、周囲の人々に何をしているのかが伝わりにくく、理解を得られないことがあります。

5│決断の難しさ
多様な可能性を考慮するため、重要な決断に時間がかかることがあります。

6│大器晩成による焦り
様々な経験や知識を得た後に成果につながるので、大器晩成であることが多いです。若いうちは、自分が何も成し得ていないと焦りを感じることがあります。

目標達成型、つまり逆算型のほうが生きやすい現代社会においては「積上型」タイプの人は無理に、目標を見つけようと頑張って「積上型」ならではの長所を活かせないことがあります。本書では、そんな「積上型」タイプの人が、毎日を充実させて、迷いのない人生を生きるための具体的なステップを書いています。

*本記事は、しずかみちこ著『「やりたいこと」はなくてもいい。 目標がなくても人生に迷わなくなる4つのステップ』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。