さすがプロ・大森元貴
『見上げてごらん夜の星を』歌唱

 嵩は舞台美術をやったことがなかったが、なんとかやってみる。好評だったが、抽象的な一点だけでなく、それぞれの場面によって美術を考えてほしいとあとから言われる。ドラマだからいいが、実際はこんな依頼はないだろう。

 稽古ではいせたくやが厳しい。「歌入り芝居になってるよ」と歌に必然性がないといけないと言う。

 これはいわゆるタモリがよく言っていた、ミュージカルは唐突に歌になるというものだろう。それが違和感でミュージカルを敬遠する人も少なくない。でも本来ミュージカルは芝居と歌が分離してなくて、心情を歌にするものなのだ。それがうまくいっていたら自然に受け入れられると当事者たちは信じている。

 妥協しないいせと六原。稽古も佳境、本番を明日に控えた日、曲を修正したいと六原が言い出す。いせは頭を絞る。

「いいものを作る、それを言われちゃうとね弱いんですよ」

 いいものを作るために切磋琢磨する。

 のぶが差し入れを持ってくると、ちょうど曲が修正されていた。

 それが『見上げてごらん夜の星を』。

 さすがプロ・大森元貴。すてきな歌声。劇団員が背後の装置をどかすと、上から小さな無数の電球が降りてきて、星になる。そのまま、本番がはじまる。のぶと嵩は客席でミュージカルを堪能した。

「撮影を見学に訪れたいずみたくさんのご親族が、いせたくやのシーンを見て涙していた」と倉崎憲チーフ・プロデューサーが語っていたが、それがこのミュージカルのシーンだ。

 この歌を歌っていた坂本九が日航機墜落事故で亡くなったのが40年前の1985年8月12日だった。

舞台シーンの完成度がプロ…→全員ホンモノ「いずみたく」ゆかりの劇団員だった【あんぱん第99回レビュー】

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