大江:テレビ東京では、入社直後から「仕事のできる人間」の1人としてカウントされます。新人であっても急に大物のインタビューを担当させてもらって「はい、どうぞ」なので、かなりのプレッシャーでした。
野口:それは大きなプレッシャーですね。
大江:ほとんどの人が入社以来それを繰り返してきたので、極度の緊張状態の中で失敗を重ねながらどうにかスキルアップしてきたという歴史があります。総理の番記者もだいたい新人記者に任されます。
野口:まさしく、そのような大きな舞台とか大事な役でプレッシャーを与えられつつ仕事をすればそれだけ大きな成長があると、僕も昭和の人間なのでそう思いたいほうです。けれども、実は燃え尽きを早めているだけということはないだろうか、というのが今の私の思いなんです。
ものすごくいい仕事ができるようになった時に、いや、でももうそろそろこういう仕事から離れて一息つきたいなということもあるのではないでしょうか。たとえば、『なんで会社辞めたんですか?』(講談社)の著者の高橋弘樹さんがそうです。
心にとっての
「程よい負荷」とは?
野口:この本は会社を辞めた6人の話をまとめたもので、僕もその中の1人で登場していますが、高橋さんご自身もテレビ東京を退職されています。
もうこんな生活をしていられないと思う何かがどこかに表れるのが、かつては55歳だったのが今では45歳になっている可能性も大いにあるわけです。ですから、ある程度レベルが上がっていくと、もうやっていられない、やらなくていいとなってしまう。それは、鼻の先にニンジンをぶら下げて走る社会の1つの限界なのではないかという気がします。
繰り返しになりますが、かといってプレッシャーを与えなければいいのかというと、まったくそんなことはない。それでは個人の成長がなくて、国としても滅びてしまいます。となると今、考えるべきは、プレッシャーを与えることで成長するという考えを無条件で受け入れてはいけないということではないかという気がするんです。