「この職場、もうムリ…」宇宙飛行士・野口聡一氏を“燃え尽き”から救った「意外な逃避先」とはPhoto:Red Huber/gettyimages

3回の宇宙滞在を実現した宇宙飛行士・野口聡一さんだが、3回目のフライトの前に大きな心の転換期を迎えていた。野口さんはその状態を「燃え尽き」と表現しているが、その背景には、社内文書の「てにをは」にまでこだわる上司の存在など、職場の悩みもあったという。そこからどう立ち直っていったのか、キャスター・大江麻理子さんが迫る。※本稿は、野口聡一・大江麻理子『自分の弱さを知る 宇宙で見えたこと、地上で見えたこと』(光文社新書)の一部を抜粋・編集したものです。

人間の欲求は
5つの段階に分けられる

大江:宇宙飛行士の方でもそんな悩みを抱えていらっしゃるのかと知ると、意外と我々と近いところがあるなと驚いたり、親近感を覚えたりします。

野口:現場が疲弊するとモチベーションが低下してくるというのは、どこにでも共通するのでしょう。

大江:優秀な人をつなぎとめるためには、担当上司の役割が大きくて、力量が問われるところだという気がしますね。

野口:つまりは、現場のやる気をそぐマネジメントにならないようにするということです。心理学者のマズローが提唱した欲求5段階説というのがありますね。

大江:はい。人間の欲求は5つの段階に分けられるという考え方で、下の階層から「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」と言われますね。

野口:まず、第1段階に生理的欲求、第2段階に安全欲求という、生存を維持するために必要な欲求があります。第3段階の社会的欲求では、何かしらの集団に所属していたいという思いがあります。その上の第4段階が、承認欲求。我々は社会的動物なので、ここでだいたい止まってしまいます。自分のやったことを認めてほしいということですが、子どもで言えば「お母さん、100点取ったから褒めて」という思いですね。