
日本人宇宙飛行士として、数々の記録を打ち立ててきた野口聡一さん。だが、2回目のフライトからの帰還後「この先どうすればいいのだろう」という戸惑いを感じたという。自分の記録を抜いていく後輩、具現化しない次の目標……これらの焦りに、彼はどう向き合ったのか。キャスター・大江麻理子さんとの対談をみていこう。※本稿は、野口聡一・大江麻理子『自分の弱さを知る 宇宙で見えたこと、地上で見えたこと』(光文社新書)の一部を抜粋・編集したものです。
不完全燃焼の毎日に
心が折れそうに
大江:では、3回目のフライトから戻って完全に燃え尽きたというわけではなく、2回目のフライトの後、3回目の前にすでに苦悩があったのですね。
野口:そういうことになります。最終的に、3回目のフライトが決まったのは2019年でしたが、私がいわゆる燃え尽きの状態になったのは3回目のフライトから戻ってきた後ではなく、3回目に行く前だったのです。
2010年に2回目の宇宙から帰ってきて、2011年には東日本大震災が起こり、その直後に日本に戻ってきました。しばらくは日本にいたのですが、その間、なかなか次の出番がやってこない、声がかからないという苦しい時期があったんです。
いろいろな人の話を聞きながら次の機会に備えてはいたのですが、それでもやはりどうしても道が開けない閉塞(へいそく)感が拭えませんでした。結果的に、再度アメリカに行くことになったのは、2016年のことでした。