知らないうちに「やりがい搾取」される人がハマる「上司のダマし文句」とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

仕事に対する正しい意味づけによる「動機づけ」と、「やりがい搾取」――似て非なるものだが、どう違うのか。知らないうちにやりがい搾取されていないかのチェックポイント、翻って、上司はどのように部下を導くべきなのか。人事や採用分野に詳しいコンサルタントによる連載第16回。(人材研究所ディレクター 安藤 健、構成/ライター 奥田由意)

“お客様の笑顔のために頑張りましょう”
それ、本当に「意味づけ」ですか?

「これでお客様に喜んでもらえるんだから、多少の残業は大丈夫だよね」
「この仕事ができるだけでも有難いと思うべきだよ」
「私たちはお客様の『ありがとう』を食べているんです」

 冗談でも、上司からこんな言葉を聞いたことはありませんか。仕事に意義を見出すように促す適切な「意味づけ」に聞こえるかもしれません。しかし、その言葉の裏には「やりがい搾取」の罠が潜んでいる可能性があります。

 以前、「なぜか出世しない人」に共通する“たった1つのNGグセ”でお話した「意味づけ力」は、仕事のパフォーマンスを向上させる重要な要素ですが、「やりがい搾取」とは本質的に異なるものです。しかし、厄介なことに表面的には似ているように感じられるため、「やりがい」という名目で、働き手が不当な条件を受け入れてしまうケースが後を絶ちません。

 特に「子どものため」「お客様のため」などの大義名分がある、教育系、福祉系、サービス業、顧客対応がメインの職場などでは、やりがい搾取の構造が生まれやすいと言われています。熱心にやらなければ疎外されるような雰囲気の中で、問題視すべき労働条件も、「やりがい」で正当化されてしまいがちです。

 では、健全な意味づけとやりがい搾取は何が違うのでしょうか。知らず知らずのうちに不当な扱いを受け入れたり、逆に上司の立場で、無意識にやりがい搾取を行ったりしてしまわないように、違いを見分けるポイントを解説していきます。